相談室日誌 連載447 支払い困難な患者とどう向き合うのか(鹿児島)
「息子さんにオムツを買ってくるよう伝えているが、お金がなくて今は買えないと言っている」。当時、当院では患者さんが使用するオムツは家族に持参するようお願いしていましたが、Aさんは入院して約二カ月、未だ病棟のオムツを使用し、入院費も未収のままでした。
Aさんは八〇代女性、二人の息子と同居でした。収入は本人の年金が月約一〇万円、長男の夜勤パート収入が月約一一万円、次男は精神疾患を抱えて仕事に就けず、世帯収入は月約二一万円でした。実は、長男は心筋梗塞で当院に入院し、先月退院したばかり、Aさんの夫が遺した借金の利息のみを返済している状況でした。
まずは介護保険と生活保護を申請。あわせて当院の無料低額診療事業の手続きをしました。次に世帯を分けてAさんを非課税世帯とし、オムツ助成金も申請。生活保護が決定し、Aさんは介護老人保健施設へ入所、息子たちは家賃の安いアパートへ引っ越しました。借金は、無料弁護士相談を利用して解決できました。
長男の入院費も未収のままだったので、長男とAさん二人分の医療費支払いについて話し合い、Aさんの生活保護申請前の二カ月分は無料低額診療事業を利用して本人負担なし、長男の入院費未収とAさんの生活保護申請後の一部負担は分割で支払うこととしました。
未収金分割払いの約束をしてから半年。年金支給日と月末の給与支払日に、必ず当院に支払いに来ます。決めた金額より少ない時もありますが、その都度相談しながら、支払いは続けています。その際に、近況や体調、家族の様子で変わったことがないか、聞くようにしています。半年前に一〇万円を超えていたAさん世帯の未収金は残り三万円ほど。Aさんが自信を取り戻し、生き生きとして帰る姿を見ると元気をもらいます。
「支払い困難」や「要求の多い」患者・家族には、一人ひとりと向き合うことで自分たちにできること、やらなければならないことが見えてくると感じました。
(民医連新聞 第1673号 2018年8月6日)