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民医連新聞

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相次ぐ値上げに悲鳴 入院給食費・水光熱費で月5万円にも 福岡・健和会で調査

 四月から一般病棟の入院給食費が、一食三六〇円↓四六〇円に値上げされました。値上げ分は一カ月で九三〇〇円! 昨年一〇月以降、水光熱費(居住費)も値上げ。合わせると最大で月二万円以上の負担増です。事態を重く見た福岡・健和会は、全入院患者を対象に患者アンケートを実施。同法人の戸畑けんわ病院、大手町リハビリテーション病院で取材しました。
(丸山聡子記者)

 「入院した当初と比べると月一万円くらい高くなった」と話すのは、藤本寿雄さん(六六)。母の仁子さん(九〇)は退院先がなかなか見つからず、戸畑けんわ病院での入院生活は一年以上になります。
 水光熱費(居住費)は昨年一〇月、今まで負担のなかった医療区分II・IIIの患者まで対象を拡大して二○○円の負担となり、医療区分Iの患者負担も三二○円↓三七○円に値上げされました。さらに四月からは、全患者の負担が三七〇円となりました。
 「治療内容や入院環境は変わってないのに、なぜ一日〇円→二〇〇円→三七〇円と高くなるのか。長期入院の患者にはきつい」と寿雄さん。「ここは差額ベッド代がかからないので助かるが、他の病院のように差額代もかかると、言いたくないけど、早く死んでくれ、という心情にもなりかねない」と苦しい胸の内を語ります。

■入院給食は治療の一環

 国は一九九四年に入院給食を療養給付から外し、自己負担を導入しました。民医連は「入院給食は治療の一環」だとして自己負担導入に反対しました。一日六〇〇円からスタートした自己負担は値上げを繰り返し、今回の見直しで一日一三八〇円(四六〇円×三食)と当初の二倍以上の負担増です。
 健和会の四つの病院では、値上げのお知らせとともに抗議声明を掲示し、六月の医療費請求に合わせてアンケート用紙を配布。戸畑けんわ病院では医事課職員が病棟を回り、ほとんどの入院患者から回答を得ました。値上げについて約六割が「仕方ない」、三割が「納得できない」と答えました。
 「納得できない人が多いと思っていたので驚いた」と話す診療事務課の山口昌紀課長は、「でも…」と続けます。医療費の支払いを「大変負担」「負担」と答えた人は七割にのぼったからです。「貯蓄を取り崩した」「保険を解約」と答えた人もおり、「家族の生活を圧迫し、治療中断にもつながりかねない」と懸念します。
 自己負担を求める国の言い分は、「家にいても食費や水光熱費はかかるため、在宅で療養する人との均衡を図る」というもの。山口さんは、「入院中でも自宅の水光熱費の基本料金はかかる。筋が通らない。急性期より医療行為の少ない一般病棟での値上げは、慢性期の患者を病院から追い出したい政府の意図が見える」と憤ります。
 大手町リハビリテーション病院に夫(八四)が入院するAさん(八二)は、「医療費以外にも出費がかさむ」と訴えます。オムツ代は月二万円近く。Aさん自身も高齢なため、見舞いにはタクシーを利用し、往復で数千円。帰宅するとクタクタで一人分の食事を作る気力は失せ、出来合いのもので済ますことも増えたと言います。
 「食費は上がり、給食費も値上げされ、やりきれない。政治家は私たちに目を向けてほしい」。

■入院中の食事は自己負担?

 戸畑けんわ病院は入院患者の九割超が六五歳以上の高齢者です。一日一~二食しか食べないという人も少なくありません。所得が低い人ほど主食の割合が高く、野菜や果物の摂取量は少ない傾向です。だからこそ、入院中はバランスのとれた三度の食事を提供し、退院後の食事につなげられるよう、栄養指導など工夫してきました。
 管理栄養士の西本智子科長は、「当初から一食分の診療報酬は六四〇円で変わらず、食材費の高騰や消費税増税でむしろ目減りしている。患者負担の値上げは、私たちも悔しい」と話します。
 西本さんらが危惧するのは、「一日二食でいい」「朝は自分で買ったパンとコーヒーで十分」と申し出る患者が出てこないか、ということです。「食事も含めた入院療養という考え方が崩され、入院中も食事は自己責任とされかねない。水光熱費と合わせて月五万円という額を無理なく払える家庭がいったいどれだけあるでしょうか?」と話しています。
 健和会では、自治体に対し、国への意見書提出を求める請願や、地域の医療機関とも連携した署名運動などを検討しています。
 全日本民医連栄養委員会は入院給食費値上げに反対の声明を発表。給食費、水光熱費の自己負担をなくすことを求めています。

(民医連新聞 第1672号 2018年7月16日)

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