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民医連新聞

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ケロイド治療で渡米した 「原爆乙女」の葛藤描く 舞台『その頬、熱線に焼かれ』

 広島の原爆被爆から一〇年、ケロイド治療のため、かつての敵国アメリカに渡った女性のたちの物語『その頬、熱線に焼かれ』。女優七人のユニットOn7(オンナナ)と劇団チョコレートケーキの作家と演出家がタッグを組み、二〇一五年に話題を呼んだ舞台の再演! 出演するOn7の渋谷はるかさん、尾身美詞(みのり)さん、吉田久美さんの三人にお話を聞きました。(代田夏未記者)

 戦後七〇年の二〇一五年に『その頬、熱線に焼かれ』は初演されました。まずは知ることから始めたいと、On7のみなさんは広島に行き、実際にアメリカに渡った笹森恵子(しげこ)さんや、被爆者たちに実体験を聞いてきました。

■消すことのできない傷

 本来であれば青春を謳歌(おうか)する若い頃に、原子爆弾の熱線によって白く柔らかな肌は焼かれ、溶かされました。消すことのできないその傷を負ったのが「原爆乙女」。ケロイドは少女たちの笑顔を奪い、人とのふれあいも奪いました。
 被爆から一〇年後の一九五五年、二五人の原爆乙女は海を渡り、最先端の医療でケロイド治療を受けるため米国の地へ降り立ちました。多くの人たちの尽力で治療を受けるものの、手術中のミスにより渡米した「原爆乙女」のひとりが亡くなってしまいます。この物語は彼女が亡くなった一夜の葛藤が舞台になっています。
 「開きっぱなしの目が閉じるようになった」「癒(ゆ)着した口が開くようになった」。生活する上で不可欠な機能を取り戻し、笑顔をも取り戻した女性たちも確かにいます。しかし、一目で分かる傷痕は残り、被爆する前の状態に戻れた人は誰もいません。身をもって原爆の悲惨さを問いかけた彼女たちの姿は、米国民にも深い印象を残しました。

■どう生きたいか

 再演を前に今年も広島を訪れたOn7のみなさん。三年前に会った笹森さんはアメリカで生活していますが、今でも交流があり、日本に帰ってくると食事をします。
 初めて笹森さんに会ったときの最初の言葉は「原爆にあったのは私たち二五人だけではないの。もっと多くの人が苦しんでいるの」でした。原爆を受けたことで、「生涯虐待」とも言われる終わりのない苦しみが今も続いています。
 一方で、招待されたアメリカでは、無償で治療を受け、住まいもボランティアによるホームステイ。そこには、お互いの憎しみを乗り越えて、たくさんの愛でつながってきた歴史があります。
 尾身美詞さんは、「戦争を知らない私たちは想像し続けることしかできません。でも、なかったことにはしたくない」と話します。「『どう生きていきたいのか』という思いを描いた作品。普通の女の子の話です」。

■未来に願いを込めて

 尾身さんは「二〇一五年から今までたくさんの人に関わり、考える機会が多かったです。より深くいろんなことを思いながら芝居をしたい」と話します。
 吉田久美さんは「今まで会った人の思いも大切に、お客さんがいい時間を過ごせたと思えるよう、芝居をしたい」と意気込みます。
 渋谷はるかさんは「心の強さをもってよい作品にしたい。女性たち一人ひとりの心持ちや貫こうとした思いを伝えたい」と思いを語ってくれました。

* * *

 「知らないより知った方がいいなら、やらないよりやった方がいい」。そんな思いで原爆の悲惨な過去を繰り返さないよう、祈りと未来へ願いを込めて届けます。


 舞台は7月27日、亀戸文化センターカメリアホール。7月31日~8月7日まで函館、札幌、旭川。8月9~12日まで東京芸術劇場シアターウエスト。8月15~16日はJMSアステールプラザ多目的スタジオ(広島)で公演。
 作:古川健、演出:日澤雄介

問い合わせ:080-4804-0077
          (担当:小野/10:00~20:00)
           on7onnana@yahoo.co.jp

(民医連新聞 第1671号 2018年7月2日)