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民医連新聞

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「2つの柱」を実践できる 医局集団づくりと医師の養成を 山田秀樹副会長に聞く

 今期の運動方針では、医師養成新時代、民医連の医師養成・医学生対策のさらなる前進をつくり出すことを呼びかけています。医師部担当の山田秀樹副会長に聞きました。(長野典右記者)

1 正面から受け止めて継続的な議論を

 格差と貧困をはじめとする国民がおかれている困難や、医療供給体制の再編、新専門医制度の始動、働き方改革など医師集団を取り巻く状況がターニングポイントを迎えています。これまでの延長線上で未来を見通せる状況にはありません。「2つの柱」の実践は、わたしたちに対する時代の要請でもあり、学習を旺盛にすすめてほしいと思います。
 一昨年の医師委員長・研修委員長合同会議では、医師の多様性を前提に、民医連医師として譲れない、こだわっていきたい共通項は何か、大いに議論し、学び働き続けられるような医局集団づくりが提起されました。
 政府・厚労省が、一〇、二〇年先のビジョンを示している一方で、自分たちは、すすむべき方向性を示しているだろうか? この地域で、どのような活動、運動をすすめていくのか、「2つの柱」を軸に、医療内容にとどまらずに、視野を広げて、事業所の地域の中での存在意義やポジショニングなど、自分たちの思いをまっすぐに語り合うことが必要です。
 ある集会で初期研修医から、「自分は綱領に確信をもっているが、医局の先生方はどうだろうか? と思うことがある」との発言がありました。私は、日常診療に埋没せざるを得ない中堅以上の世代こそが、議論の中で、自分たちの実践をふりかえり、日常の医療活動の中にある「2つの柱」の当事者であることを認識して後輩に伝えることが、集団づくりの上でも、研修をすすめる上でも重要だと感じます。
 今後「2つの柱」を議論する上で、あらためて、貧困や健康格差の問題にとりくむことが医師の役割だと意識する必要があると思います。世界的には、貧困や健康格差の問題にとりくむことが、さまざまな文脈で医師の役割として位置づけられています。その中で、日本でも、ようやく、プライマリ・ケア連合学会でSDH(健康の社会的決定要因)委員会活動がはじまり、大学教育のコアカリキュラムにSDHが位置づけられるようになりました。
 今後、医学生が大学教育でSDHの理論を学んだ上で、わたしたちの現場の実践の輝きにふれた時、大いに共感する時代が目の前に迫っているのかもしれません。

2 SDHの視点で活動の実践を

 私たち民医連の強みは、多職種協働をすすめる組織文化がこれまでの医療活動を通じて熟成されていること、地域でともに健康なまちづくりをすすめる共同組織を持っていることだと思います。
 「2つの柱」を研修の中で、どう学び、実践するかが課題です。民医連らしさ、とくにSDHを意識したアドボカシー活動や、さらにヘルスプロモーション活動を日常診療に組み込むことが重要です。現場の中で学ぶことを重視し、患者の背景まで踏み込んで、SDHの視点で原因の原因を探ることを積み重ねる教育が必要です。
 SDHの視点は、民医連の医療理念と重なるところであり、多くの職場ですでに実践され、その人に必要な資源を考え、提供する社会的処方までとりくまれていると思います。これを研修医からみたときに、ソーシャルワーカーにつなげておしまい、という分業にとどめるのではなく、多職種チームで課題を解決する協働をすすめる中であらためて、自分の役割をふりかえり、広げ、確信にしていく。退院患者訪問はそのアウトカムを知る意味でも重要ですし、地域のニーズを知り、掘り起こす意味でも、地域診断や地域に出かけるヘルスプロモーション活動は重要だと思います。
 この間、日々の事例を普遍化し、地域を変えるレベルまで高め、エビデンスとするような臨床研究をサポートしてほしいとの要望もあり、模索を始めた地協もあります。情報を共有しネットワークづくりをすすめましょう。

3 研修制度へのたたかいと対応を

 二〇二〇年、初期研修制度のプログラム改定が行われます。スーパーローテートの復活など、その対応整備に苦慮している研修病院も多いのではないかと思います。地域連携をさらに一歩すすめるとりくみを急いで行う必要があります。また、外来研修が導入されましたが、地域の窓として外来を位置づけ、診断治療に終わらせない、SDHの視点で気づきを促せるような研修をつくりましょう。
 制度発足当時は、概念としてのSDHやヘルスプロモーションをとりこめていないプログラムもあると思います。この機会に、「2つの柱」をプログラムの中に落とし込み、プログラムを深化させましょう。後期研修プログラムについても同様に整備が必要です。
 地域医療計画がすすめられる中で、都道府県が医師養成にも関与していくなど、これからはますます地域や行政との連携を重視する必要があります。「2つの柱」の実践は、地域になくてはならない医療機関としての存在を示すとりくみになると思います。
 医師の働き方改革への対応は、研修の切り口で見れば、労働条件の整備をすすめることにつながります。一方で、新専門医制度も働き方改革も、医師不足が根本的な問題となることから、「医師増やせ!」の世論を高める機会ととらえ、地域や他の医療団体等とともに運動をすすめていくことが必要です。
 時代は地域の中で医師を育てて行くことを求めていると思います。今期は、医師政策の提起も行う予定です。この間のとりくみを持ち寄り、活発な議論ができるよう期待しています。

(民医連新聞 第1670号 2018年6月18日)