『認知症実践ハンドブック』できました
全日本民医連は三月に『認知症実践ハンドブック』を発行。その内容や発行のねらいとは? 編集に携わった神奈川・汐田総合病院の宮澤由美医師の寄稿です。
二〇一八年三月、『認知症実践ハンドブック』を保健医療研究所から発行しました。高齢化の進行に伴い急増する認知症患者に日々接する中で、二〇一五年の第七回認知症懇話会以降、認知症に関する基礎的な知識や全国の仲間のとりくみがわかる冊子を作ろうという志がやっと結実しました。
二〇一七年六月一七日、第一回編集委員会が行われ、山田智編集委員長、林泰則事務局長のもと、四人の編集委員が携わり、総勢四〇人に執筆を依頼しました。
ハンドブックの内容は
このハンドブックは二部構成になっています。一部は認知症の症状、診断、治療、リハビリ、予防などについて幅広い知識を記載。介護保険認定調査の際の注意点や車の運転、精神保健福祉手帳の活用の可能性など、実用的なアドバイスも、第一線で活躍する各地の民医連職員が書いています。「認知症の人と家族の会」については岡山県支部顧問・妻井令三さんに執筆してもらいました。
二部は、日常の医療・介護実践例、地域連携やまちづくり、自治体や住民組織との共同のとりくみなどについて。全国津々浦々での経験をもとにした、より実践的な内容です。認知症疾患医療センターや地域包括支援センター、認知症初期集中支援チーム事業を受託し行政とともにとりくむ事業所、認知症治療病棟やもの忘れ外来、各種加算や専門資格の取得を通じたとりくみなど、いずれも先進的かつ意欲的で、経営改善や人材育成にもつながるものです。
共同組織の人の空き家を利用した居場所づくりや、まちづくりに発展した認知症見守り訓練は、心温まる様子が写真からもうかがえます。法人ですすめる認知症の課題へのとりくみや県連での研究会のとりくみは、今後、普及が望まれる方法論かもしれません。最後に山田編集委員長が、スコットランドのスターリング大学認知症サービス開発センターで学んだ認知症ケアについて執筆しています。
43期の総会方針にも
第四三回全日本民医連総会方針の第四章第三節は「特に二〇二五年に七〇〇万人に増加すると予測される認知症へのとりくみは、日常の医療・介護実践の大きな課題です。地域や共同組織と協力しながら『認知症カフェ』などに旺盛にとりくみながら、全日本民医連が発刊する『認知症実践ハンドブック』を参考に、医療・介護、職員育成、まちづくりの課題を総合的にすすめ、認知症になっても安心して住み続けられるまちづくりをすすめましょう」と提起しています。
このハンドブックを参考にしたとりくみが、各地の無差別・平等の地域包括ケアの確立に寄与することを願ってやみません。地域の実情に合わせ知恵と工夫を結集したとりくみの中で、経営、職員の確保と育成、運動との好循環が作り出されるものと確信します。全国の仲間の奮闘を期待します。
価格:700円(税込)
発行:保健医療研究所
電話:03(5842)5656
※全日本民医連ホームページの「オンライン書店」からも注文できます
認知症実践ハンドブック編集委員会
編集委員長 山田 智(全日本民医連前副会長)
編集委員 赤塚 英則(神奈川・神奈川診療所)
今村 高暢(愛媛・愛媛生協病院)
藤田 文博(岡山・岡山ひだまりの里病院)
宮澤 由美(神奈川・汐田総合病院)
事務局長 林 泰則(全日本民医連事務局)
(民医連新聞 第1670号 2018年6月18日)