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民医連新聞

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相談室日誌 連載443 社会保障制度の利用をあきらめさせられた男性(埼玉)

 当院の採用面接に来たAさん(五〇代、男性)は明らかに具合が悪く、面接担当の看護長がすぐに受診をすすめました。失業して以降、就職活動をしながら失業手当を受給。貯金も少なく糖尿病でありながら受診を控えていたのです。体調が悪化したAさんはハローワークに行けず、失業手当の認定を受けるための面談もできずに失業手当も給付されなくなっていました。
 ハローワークの職員から生活保護をすすめられましたが、福祉事務所では「次回のハローワークの面談で就労活動の様子が認められれば、再度失業手当を受けられる」ことを理由に生活保護申請を受け付けてもらえませんでした。社会福祉協議会で一万円の貸し付けとフードバンクの支援を受け、受診できないまま就職活動をしていましたが、就職先は決まらず。Aさんは食費や医療費を削りながらの生活や就職ができない状況に「仕方ない」とあきらめ、「このまま次の失業手当受給日まで持てばいい」という考えになっていました。身体がつらくても我慢するしかなく、これ以上誰かに頼れない、という思いもあり、各機関での対応がAさんを投げやりにさせてしまったのだと思われました。
 当院で無料低額診療を適用し、無事に失業手当を受給でき、フードバンクを活用しながら、定期受診もできるようになりました。
 Aさんは自分でとれる手だてを考え、行動していましたが、行政のたらい回しと、さらなる努力を強いられる対応で、社会保障制度の利用をあきらめさせられていました。一歩間違えば手遅れ事例になりかねなかったと、強い危機感と憤りを覚えます。
 問題をアセスメントし、一歩先のことまで考えて支援する姿勢が大事です。今回のようなことが起こらないように、福祉課には保護申請を受け付けること、他機関には無料低額診療事業を知らせつつ、連携して生活困窮事例に対応していくことを申し入れたいと思います。自分自身も、他機関につなげて終了しないように、責任をもって支援をしていきたいと感じました。

(民医連新聞 第1669号 2018年6月4日)