北海道・函館稜北病院 増改築リニューアルで設備を充実 患者さんが使いやすく 職員にもやさしく
北海道・函館稜北病院は、二〇一六年一一月にリニューアルしました。患者さんに一〇年後も安心して利用してもらうために、どんな病院にしたいか―。職員から意見を募集すると、さまざまなアイデアが出され、設備を充実させることができました。トイレもその一つ。新病院には、患者さんの状態に合わせて使える多種多様なトイレがあります。取材しました。(丸山いぶき記者)
函館稜北病院は、回復期リハビリテーション病棟と一般病棟を主体とする一〇四床の病院で、二〇一六年一一月、増改築工事が完了しました。
「耐震基準を満たし災害にも強い安全安心の病院、療養環境を整備し職員も働きやすい病院にしようと議論を重ねました」と話すのは、吉田清司事務長(兼・薬剤師)。当時、一般病棟の看護師長だった鈴木智子さんも、「せっかくリニューアルするのだから、患者さんが使いやすく職員にもやさしい病院にしようと、リハ・病棟合同会議でさまざまな要望を出し合いました」と振り返ります。
特にトイレは、多職種が参加するプロジェクトチームが、解体予定の旧棟につくったモデルトイレで試作。そうしてできた新病院には、患者さんの状態に合わせて使い分けられるさまざまなトイレを設置しました。左右どちらかの壁に手すりがある一般的なものの他、両側から二人で介助できる空間をとったタイプ、車いすから楽に安全に移乗できるよう壁に向かい座るタイプなど。それぞれ左右を反転させたものもあります。
■寄りかかれるのが「いいね!」
中でも、工夫をこらしたのが通称「藤山バー」! 患者さんが座位、立位それぞれで寄りかかり身体をささえられる二段の補助棒です。一般・地域包括ケア病棟のトイレに設置しました。
考案したのは、トイレプロジェクトのメンバーでもある作業療法士の藤山翔さんです。「介助者が二人必要なところを一人でトイレに行ければ、患者さんも職員にもいいのではと考えました」。トイレに行きたいけれど座位、立位ともに姿勢保持が難しい高齢患者さんを思い、同時に人手不足も補うアイデアでした。
実は、オーダーメード。「費用はかかりましたが、今後、ほかの福祉用具を考える際にも生きる、貴重な体験でした。患者さんを一生懸命みる精神は先輩ゆずり。今も改良点を考えています」。
■かわいいイラストが目印
一方、多種多様なトイレは外観から区別できず、患者さんが自分に合ったトイレを判別できず迷ってしまうことも。そこで、回復期リハ病棟には、トイレのタイプ別に、「赤=果物」「黄=動物」「ピンク=花」の目印をつけました。
発案者は作業療法士の伊藤綾子さん。「軽介助の患者さんでも、いつものトイレ環境が設定できないと重介助が必要になります。でも、『○番トイレでお願いします』という声かけでは患者さんは覚えられないことも。色と絵でわかる目印があれば記憶にも残りやすいはずと考えました」。「病院の雰囲気が明るくなった」と職員にも好評で、若い職員でつくる次世代プロジェクトで企画した、「私が変える稜北病院」アイデア募集でも、一位に選ばれました。
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以前は別フロアにあった回復期リハ病棟とリハ室も、新病院では同じ階に設けました。ほかにも、医局を縮小して実現したカフェのような職員の交流スペース、隣のクリニックからの動線を考え場所を移した検査室など、新病院には職員のアイデアが満載。友の会からも予想以上の基金・寄付金が集まりました。「まさに、みんなの協力でできた新病院です」と吉田事務長は胸を張ります。
※『民医連医療』七月号の「民医連事業所のある風景」でも、函館稜北病院をとりあげます。
(民医連新聞 第1669号 2018年6月4日)