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民医連新聞

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こたつぬこ先生の社会見学~3・11後の民主主義 (13)「絶対にやめない」

 本紙が発行されたとき、政治はどんなことになっているでしょうか。このコラムを書いている4月17日は、財務次官のセクハラ問題で政府はパニック状態に陥っています。森友・加計問題にとどまらず、この5年間の安倍政治で蓄積された膿(うみ)が、次々と噴き出しているのではないでしょうか。
 4月14日、国会議事堂前では5万人が参加する大規模抗議行動がありました。このコラムをお読みの方のなかにも参加された人はいると思いますが、この時、実に久しぶりに路上が開放され、国会議事堂前の道路はたくさんの群衆で埋まりました。路上に広がる開放感を味わいながら、「あれ?」と思いませんでしたか? 「警察官の数がやたらに少ない」と。
 3月半ば以後の毎週金曜日、首相官邸前でも安倍政権の辞任を要求する抗議集会が行われてきました。しかしその場には、大量の機動隊が動員され、路肩は鉄柵でびっしりと固められ、集会参加者は次々と分断され、とにかく首相官邸前にたどり着かせないためにありとあらゆる妨害が行われていました。民医連は「医療班」を組織し、集会参加者のケアにあたっていますが、あまりの圧迫にたくさんのけが人、病人がでました。
 ところが4月14日の国会前では、あっさりと路上は開放され、集会終了時刻まで警官は消えてしまいました。なぜか?
 いくつか理由はありますが、やはり安倍総理が「首相官邸前での集会は絶対に嫌だから」が一番大きい要因だと思われます。安倍総理の祖父・岸信介は、1960年の安保闘争のとき、デモ隊に囲まれた首相官邸に籠(ろう)城(じょう)しているさなか、自民党の川島幹事長から「安保条約は批准されましたから、退陣してください」と言われました。岸は嫌だと抵抗しましたが、数日後に辞任表明に追い込まれます。
 安倍総理は2015年の安保法案をめぐるたたかいのとき、このエピソードをしきりに話していたそうです。安倍さんとしては安保法制成立でおじいさんの恥辱を晴らしたつもりだったのでしょう。つまり「俺はデモ隊に勝ったんだ!」と。ところがいまや、おじいさんと同じコースを歩みつつあるわけです。だから絶対に二の舞は嫌だ、首相官邸前でデモなどとんでもないと思っているでしょう。
 安倍総理は絶対に辞めません。少なくとも自分からは辞めません。今年初めまでは、改憲で歴史に名を残すはずでしたが、いま辞めたらスキャンダルまみれの史上最低の総理大臣として歴史の屑に葬りさられるわけですから。「あらゆるものを犠牲にしてでも生き残る」。この暗い情熱に駆られた総理大臣を引きずり下ろすたたかいは、もう少し続きます。

こたつぬこ:本名は木下ちがや。政治学者。大月書店から『ポピュリズムと「民意」の政治学:3・11以後の民主主義』絶賛発売中!
Twitterアカウント@sangituyama

(民医連新聞 第1667号 2018年5月7日)

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