フォーカス 私たちの実践 栄養士による訪問指導 福岡・健和会京町病院
食事に不安な患者
訪問栄養指導で支援
福岡・健和会京町病院では、食事に不安があるために退院を躊躇する患者さんと家族に対し、二〇一六年度から訪問栄養指導を行っています。在宅療養のささえとなると同時に、患者と接する機会が少ない栄養士にとっても、患者の背景を知る場となっています。第一三回学術・運動交流集会での堀邉恭子さんの報告です。
同院は全館療養型病床です(一一二床)。複合的に疾病を抱える患者とその家族は、食事に不安があることから退院をためらうこともあります。二〇一六年の診療報酬改定で訪問栄養指導の条件が緩和され、管理栄養士がかかわりやすくなりました。
■「まずは一人訪問」を目標に
訪問栄養指導は二つに分けられます。介護認定を受けている場合は介護保険の居宅療養管理指導、受けていない場合は、医療保険の在宅訪問栄養食事指導です(表)。
対象は、特別食を必要とする患者、がん患者、摂食機能もしくは嚥下機能が低下した患者または低栄養状態にある患者です。いずれも、月二回まで利用できます。
一六年の報酬改定を受け、以前から「食事」が在宅療養のカギの一つだと感じていた外来看護師、通所リハの作業療法士、管理栄養士の三人で「訪問栄養指導を始めたい」と提案。医師も「病院の外に目を向け、踏み出すことは、今後さらに必要になる」と前向きに受け止め、開始が決まりました。
外来看護、通所リハ看護、通所リハスタッフ、SWで情報共有し、「まずは一人訪問すること」を目標に対象者をリストアップ。主治医の意見や家族の状況などを検討し、スタートしました。
主治医の指示のもとケアマネに依頼しケアプランに訪問栄養指導を組み込んでもらいます。ケアプラン決定後は、サービス担当者会議、ケアカンファレンスを実施し、多職種で情報を共有。栄養ケア計画を作成し、訪問指導を実施・検証し、継続か終了となります。
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■生活の場で気づいたこと
二〇一六年度は三人の患者に対計一三回の訪問指導をしました。
●七〇代男性、脳梗塞による嚥下障害、体重減少あり→誤嚥性肺炎予防を目的に安全な食形態指導、体重維持に必要な食事量とエネルギー増加のポイント説明を、本人と妻に実施(五回で終了)
●八〇代男性、肝細胞がん末期→残された時間を可能な限り自宅で過ごすことを目的に、食べやすい食材や調理法、食形態の指導を、本人、妻、娘に実施。配食弁当の調整(六回で終了)
●六〇代男性、痛風腎、慢性腎障害→食事療法が必要だが、独居で調理が難しいため、本人とヘルパーに、減塩とカリウム制限、食材選びや具体的な調理方法について指導(二回実施後、経過観察)
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栄養士は普段患者さんと接する機会は多くありません。自宅に行ったことで初めて気づけたこともありました。嚥下困難でトロミが必要にもかかわらず、水をそのまま飲んでいた…などです。また、がん末期の患者に対しては、変化する病態に合わせて迅速に指導内容を変えることができました。患者さんの生活の場で背景を見なければ、一人ひとりの患者さんに有効なアプローチはできない、ということに栄養士自身が気づけたことは大きかったと思います。
(民医連新聞 第1666号 2018年4月16日)
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