談室日誌 連載440 「島へ連れて帰りたい」家族の思いにこたえる(沖縄)
Aさんは六〇代女性、那覇から三〇〇㎞離れた離島で、脳卒中を発症しました。そこで初期治療を行い、さらなる治療のため、沖縄本島の当院に転院しました。治療と精査を重ねるうちに、悪性疾患が見つかりました。意識障害も残りました。
治療が落ち着き、全介助レベル、経鼻栄養というAさんの状態をふまえ、家族の気持ちを確認しながら今後の行く先探しをすすめていきました。悪性疾患があるため、県内の施設の受け入れはどこも厳しい状況でした。予後も悪いなか、ご家族から「Aさんの生まれ育った離島へ連れて帰りたい」との希望が出されました。相談・調整の末、その離島の病院が「ひとまず受け入れ、自宅に帰れるかどうか調整しましょう」と言ってくれました。
次は、どのようにAさんを離島まで搬送するか、です。小さな島なので大きな航空会社の運航はなく、移動は小型プロペラ機です。
当院から飛行場までの搬送車の手配、飛行場への直接搬送車乗り入れのための許可申請書作成、航空会社や機長と出発時間や待ち合わせ場所の細かい打ち合わせなど、普段あまり経験のない調整を行いました。
機長からは、「飛行機に看護師を同乗させてほしい」との依頼がありました。急性期病院の看護師さんの忙しい業務を思うと、半日以上の付き添いは難しいのではないかと躊躇しました。しかし、Aさんを生まれ育った島へ帰してあげたいと病棟看護師さんたちがシフトを調整し、同乗できることとなり、Aさんは無事に搬送されました。二週間後、家族が来院し、島で状態も落ち着いていること、当院への感謝を伝えてくれました。
重度の患者さんの離島への退院支援は、受け皿探しや、家族の気持ちをささえること、移動方法の確保など、課題も多いものでした。最終的には、「島へ連れて帰りたい」という家族の強い意思と、病院スタッフの底力にささえられての退院支援となりました。
(民医連新聞 第1666号 2018年4月16日)
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