「総がかり」で守ろう いのちくらし 元SEALDSメンバー 諏訪原健さん あなたが語ることが社会を変える確かな一歩になる
民医連外の皆さんの声を紹介している「総がかりで守ろう、いのち・くらし」。今回は社会や政治に目を向け行動している二〇代・元SEALDsメンバーの諏訪原健さんの登場です。
私は、二〇一四年に特定秘密保護法に反対する学生有志の会(SASPL)の発足に関わり、その後二〇一五年からはSEALDsや市民連合などの活動にとりくんできました。最近、森友学園に関する公文書改ざん問題が明らかになってからは、有志で首相官邸前抗議を呼びかけています。このように経歴を書き並べると、政治に対して意欲的な人間のように見えますが、そもそもは全くそんなことはありませんでした。
■ 「不満」 口にせずにいて
私が生まれた家は裕福ではなく、金を持っていないとこんなにも自由がないのかと思いながら育ちました。だからこそ、自分の置かれた状況から這い上がるために、奨学金をいくら借りてでも大学に行って、いい会社に就職するしかない、そんなことを心に誓って生きてきました。社会や政治に不満がないわけではありません。でもそんなことは考えるだけ無駄だと思って、「飯を食う」ために自分の人生を合理化していました。
そんな私が「政治」に関わるきっかけは、とても些細なことでした。ちょうど特定秘密保護法が成立した頃に、本間信和という大学の後輩から「健くんと同い年の高校の先輩が、デモやろうって思っているらしいんですけど、会ってみません?」と誘われたのです。当時はデモにいいイメージを持っていなかったので、正直結構迷ったのですが、何となく彼の「高校の先輩」に会ってみることにしました。それが奥田愛基です。
出会った日、私たちは政治や民主主義について、あれこれ話しました。様々な問題点が指摘されながら、特定秘密保護法が成立した状況に対して、「俺たちは次の選挙まで、意思表示できないのか」「本当はデモをはじめ、民主主義への参加の回路は投票以外にも開かれているはずなのに、それが自分たちには使えないものになっているのではないか」「それなら民主主義への参加方法をアップデートしていく必要があるのではないか」…そんな話を延々としました。その話はとても刺激的で、私は彼らと一緒にデモをつくり変えるというプロジェクトにとりくむことにしたのです。
■まずデモを変える活動
私たちが特に意識したのは、デモの中に個人のスピーチを入れることでした。政治的な話は、政治家や専門家などが、堅苦しい言葉で語り合うものというようなイメージがありますが、本来はそうではないはずです。私たちの普段の暮らしと政治は密接につながっています。だからこそ私たちは、自分が経験したことや、感じていることから政治を語り、それによって政治を自分の手に取り戻そうとしました。
同時にそれは、スピーチを聞く人に対する「あなたも話していいんだよ」というメッセージにもなっていたと思います。
私たちはデモを変えるというところから活動を始めたわけですが、振り返ってみると、その過程で自分自身が大きく変わったように思います。何か目の前に問題があった時、外部の権威的なものにすがるのでもなく、何となくの空気に従うのでもなく、自分自身の頭で考えて、行動するようになりました。社会というのは、たくさんの個人からできています。そのうちのひとりが変わるということは、社会もまた少し変わるということだと思います。
もし今、政治を語ることにためらいを持っている人がいたら、あなたが言葉を紡ぎ出すことが、社会を変える確かな一歩になるのだと伝えたいです。たくさんの個人の声が積み重なっていけば、きっと一人ひとりの尊厳や生活が大切にされる政治に変わっていくはずです。
すわはら・たけし
筑波大学大学院生だった2015年、安保法制に反対しSEALDsメンバーとして活動。現在も「市民連合」(=安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)などで、発信を続ける。1992年、鹿児島県生まれ
(民医連新聞 第1665号 2018年4月2日)
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