フォーカス 私たちの実践 リハ栄養のカンファレンス 山梨・甲府共立病院 セラピストと栄養士で栄養面を意識してリハビリを効果的に
リハビリを行ううえで、患者さんの栄養管理は欠かせません。山梨・甲府共立病院(二八六床)の地域包括ケア病棟(五〇床)では、セラピストと管理栄養士でカンファレンスを行い、患者さんの栄養面を意識することに。その効果だけでなく課題も明確になりました。第一三回学術・運動交流集会で、同院の理学療法士・前嶋康路さんが報告しました。
■リハに必要な栄養のため
エネルギー摂取量より消費量が上回る場合、リハビリを積極的に行っても、筋力や持久力は悪化します。栄養管理はとても大切ですが、患者さんの容態や活動量の変化に合わせた栄養管理は、不十分な状態であると考えられました。
そこで、二〇一六年度から開設された地域包括ケア病棟で、活動量と必要栄養量に関するカンファレンスを行うようにしました。
カンファレンスは、毎週水曜日の朝四〇分ほど。病棟担当のセラピスト四人と管理栄養士一人が参加します。対象はリハビリ処方が出ている患者さんで、毎回五人程度。その他に、明らかに低栄養な患者さんも対象です。
対象者の必要栄養量は、「基礎エネルギー消費量×活動係数×ストレス係数+エネルギー蓄積量」の計算式を使います。算出した値と実際の食事摂取量に応じて、食事量の増減、補助食品の追加、食形態の変更などを行います。
今回、このとりくみの結果を振り返りました。一六年五月から一二月まで、二回以上のカンファレンスで検討した患者さんを対象に、栄養状態と日常生活能力の、初回と最終の評価を比べました。
■カンファレンスの効果
対象者は一九人(男七人、女一二人)。平均年齢は七五±九・七歳で、平均在院日数は三七・八±一四・九日でした。
低栄養をBMI一八・五またはAlb四・〇以下と定義すると、転棟時に栄養不足が疑われたのは一七人。また、必要栄養量を摂取できていなかったケースは一〇人いましたが、最終評価時には五人まで減りました。
摂取カロリーは、最終評価時には一二人が向上し、維持が五人、減少は二人でした(図1)。
日常生活の能力を評価するBI(Barthel index)は、一七人が向上。維持、減少はそれぞれ一人でした(図2)。
■課題は「全患者に多職種で」
結果、対象者はおおむね摂取カロリーを増やすことができ、カンファレンスを行ったことは有意義だったと考えられます。リハビリをすすめると、運動量や病棟内の活動量が変化していきます。カンファレンスを通じて状況を管理栄養士に伝達でき、栄養不足にならないよう対応できました。
しかし、本来は入院患者全員を対象とするべきで、患者さんのケアを行い食事場面に立ち会うことの多い看護師やケアワーカー、薬剤師など、少しでも多くの職種で話し合うことが必要です。また、ベッド上安静や、寝たきりの患者さんに対応できる体重計がすべての病棟にあるわけでなく、リアルタイムでの変化を評価しにくいという問題も見えました。食事も、手術直後に食事量半分とし、食欲が向上しているにもかかわらず、食事量が変更されないままになっていたケースもありました。
入院する患者層は、低栄養が疑われる高齢者が多く、栄養に対するとりくみは今後いっそう重要になります。入院患者すべての栄養評価を逐一できる体制、システム作りが早急に必要だと考えます。
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今回のとりくみでセラピストの栄養に対する意識が高まりました。発表後、転棟・入院時に行う患者カンファレンスで栄養状態を確認しています。医師や看護師なども参加し、多職種で関わる課題をクリアできました。入院後の変化は管理栄養士と直接やりとりし、対応が難しいケースは、栄養サポートチーム(NST)に依頼し解決を図っています。
(民医連新聞 第1665号 2018年4月2日)
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