こたつぬこ先生の社会見学~3・11後の民主主義 (12)改憲反対から憲法の実現へ
労働法制の改悪をめぐる厚労省のデータ改ざんに端を発した安倍政権の瓦解過程では、森友問題にとどまらず、さまざまな事態が生じています。それがどのような変化をもたらしていくかはおいおいとりあげていくとして、まずは焦眉の課題である安倍改憲のゆくえについて。
自民党に二階幹事長という、タヌキのような顔をしたボスがいます。彼が記者たちによく言うアドバイスに、「新聞はベタ記事を読め。それですべてがわかる」というものがあります。ベタ記事、つまり新聞の端っこにひっそりと書いてある、どの政治家が誰と、どこで会ったかをつぶさに読めば、政治のながれがわかるというものです。
では安倍改憲について注目のベタ記事はどれか。3月20日の「首相動静」です。
【3月20日首相動静】
午後6時54分、官邸発。同55分、公邸着。中山太郎元衆院憲法調査会長、自民党憲法改正推進本部の細田博之本部長、高村正彦、保岡興治両特別顧問と会食。
この首相公邸に集まったメンバーは、これまで自民党の改憲を仕切ってきた長老たちです。ここで何が話されたか。そもそもこの場は、3月25日に行われる自民党大会に、正式に自民党改憲案を提出するための最後の仕上げとして設定されていたと思われます。ところが安倍政権の信頼が急落するなか、一転して「改憲案を大会にだせなくなったので安倍さんをなだめる場」に変わったと思われます。この会談の翌日、自民党改憲推進本部長の細田博之は、「改憲については、安倍総理にあいさつのなかで思いを語ってもらう」と記者団に話しています。「思いを語る」とはまるで引退セレモニーみたいですが、あと一歩のところまで来ていた念願の改憲発議が滅茶苦茶になってしまい、側近すらなだめられない安倍総理を、長老たちが集まって説得する。安倍改憲が自民党によってとどめを刺された瞬間です。
こうして、安倍改憲の落日ははっきりしてきました。だからこそいま必要なのは、あらためて憲法の価値を積極的に打ち出すこと。安倍政権がズタズタにしてしまったこの国の民主主義を、日本国憲法を旗印に再建するという、新しいプロジェクトがこれからはじまります。ですから、5月3日の憲法集会は改憲反対よりも、かつて敗戦に打ちひしがれた人々が日本国憲法を迎え入れたのを思い起こしつつ、その理念を強く打ち出し、この国の再建を誓うものになればいいと思います。
こたつぬこ:本名は木下ちがや。政治学者。大月書店から『ポピュリズムと「民意」の政治学:3・11以後の民主主義』絶賛発売中!
Twitterアカウント@sangituyama
(民医連新聞 第1665号 2018年4月2日)
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