本気で地域をささえる “無低施設”が合同研修 ―千葉県福祉医療施設協議会
千葉県内では近年、民医連やそれ以外の事業所があいついで無料低額診療を開始し、二〇一一年から五倍に増えました。うち一一施設が入会する千葉県福祉医療施設協議会(以下・協議会)は、定期的な会合や研修で、事例検討や情報交換などを活発に行っています。(丸山聡子記者)
千葉県内では二三の施設が無料低額診療事業・施設利用事業を行っています。うち一一施設が協議会の会員。年三回、会合や研修会を会員施設の持ち回りで開いています。一一月三〇日は民医連事業所の船橋二和病院で開きました。
会議の冒頭、井上峰夫会長(九十九里ホーム理事長)があいさつ。「本協議会は四施設で活動を続けてきたが、近年、新規入会が増えました。同じ県内でも人口増の地域もあれば人口減もある。無低を必要とする人がいる限り、コツコツととりくみを重ねていきたい」と語りました。会議に先立ち同院の見学もしました(別項)。
■困窮する人をどうささえるか
見学後は事例検討。困窮していて無低が必要にもかかわらず患者本人が申請手続きできないケース、増えているオーバーステイの外国人のケースなどが出ました。
前者では、「成年後見につなげるのが筋だが、すすまないのが現状」という声や、お金も身寄りもない患者の入院や看取りにどこまでかかわれるか苦慮する…との悩みが出ました。「転院が必要でも、転院先に無低診がないと困難」という発言には共感の声が。
東葛病院・SWの豊田恵太さんは、薬代の負担について発言。保険薬局では無低を行えないため、医療費は無低で免除されても薬代が患者に重くのしかかっていることに触れ、「中でもインスリンは高くて、薬代が払えずに中断してしまう糖尿病患者が多い。未収金覚悟で薬局が対応しているケースもある」と発言すると、「医療制度も変わってきた中で(一九五一年の)無低の規定は実態に合っていない」という指摘も出ました。
井上会長は「同様の矛盾はどこでも抱えている。具体的な事例を積み重ね、行政にも認識してもらう必要がある」とまとめました。
オーバーステイの外国人については苦労が語られました。「じわじわ増えている。不法滞在だからといって治療を中断したり、即刻通報することは職業倫理上できない」「診療はするが、未収金になったり、医療以外の制度につなげることが難しい」という発言のほか、「HIVの確定診断後、支援団体の働きかけもあり、人道的配慮で国保に加入できたケースもあった」と紹介もありました。
熱心に質問・発言していたのは、安房地域医療センター・総合相談センター長の香田道丸さん。同センターは二〇一二年から無低を開始しました。漁業など第一次産業の従事者が多く、県内でも高齢化がすすむ地域です。「現金収入が少なく、支払いが困難で医療を受けられないという相談が増えている」と香田さん。現在、年間で八〇人ほどの患者が無低を利用しています。「無低が地域の人に役立っていると実感する。協議会で学んだり情報交換しながら、充実させたい」と話しました。
一〇月から無料低額施設利用事業を始めた介護老人保健施設まくはりの郷の紹介もありました。
東葛病院・SWの柳田月美さんは、「無低の事業所には困難を抱える人が多くやってきます。協議会では、どう支援できるか、実務担当者同士で突っ込んだ意見交換ができます。行政ごとにばらつきがある制度について情報交換したり、患者を紹介し合う関係もできてきました。困窮している人は地域にいるので、民医連だけでなく、医療・福祉関係者が連携して地域レベルで考えることが大事だと思います」と話していました。
見学会で質問ぞくぞく
見学会では「健康友の会」へ関心が集中。健康づくりや相談会などの活動や病院との連携について質問が出ました。送迎サービスを行うNPOの運営方法へ質問も。
船橋市内の透析患者の約三分の二を同院がみていることや、地域連携室やSWの配置の手厚さも注目されました。「船橋二和病院なら、入院から在宅まで一貫して診てもらえると感じた」という感想もありました。
「無低の患者の特徴は」「無低終了はどんな場合?」などの質問も。野田尚史事務長は、「生活保護につなぐケースが多い。就労して無低を卒業できるケースはまれ。会社員でも社会保険に入れず国保だったり、病気やケガで休業する際の補償がない例も増えている」と紹介しました。
井上会長は、「診療報酬が下がる一方で困難を抱える患者は増えている。患者のためにやればやるほど、病院の経営が苦しくなるという矛盾がある」と指摘しました。
(民医連新聞 第1661号 2018年2月5日)