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民医連新聞

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事務が子育て世帯調べ 6自治体の制度改善へ 長野・飯伊民医連

 事務集団が、自治体の行う子育て支援の一つである就学援助制度の改善に一役かいました。長野・健和会などで行う事務研修のベテラングループが、保育料の調査や地方議員との懇談を行ったところ一つの市議会で取りあげられ、運用の見直し、入学準備金が事前支給されることに。その影響が近隣自治体にもおよび、六つの自治体を動かしました。(土屋結記者)

 長野県南部の飯伊地域にある健和会病院を中心に構成する飯伊民医連では、二〇〇九年度から入職年数でグループ分けした事務研修を始めました。一~四年目までは各年、五~一〇年目の中堅、一一年目以上のベテランは年少・年中・年長の三つ、さらに主任、職責者、全一〇グループに分かれています。中堅以上ではそれぞれの目標に沿って、毎年自分たちで研修テーマを決めます。年度末に事務職員交流集会を行い、各グループがまとめを報告します。
 今回の話題の主役、「ベテラン年少グループ」は月一~二回集まっています。情勢や地域の現状を話し合い、一六年度のテーマを「子育て世代の貧困」に決めました。「グループの大半が子育て中で、子どもの貧困問題を法人全体でとりくんでいましたから」とメンバーの北原真智子さん。健和会病院では毎週、小児科医の和田浩副院長が中心となって貧困学習会を開いています。伊藤貴明さんは「事務ならではの視点で貧困問題にとりくもうと考えた」と話しました。

■実情知り声を届ける

 診療圏の飯伊地域に大きな企業は無く、県内でも所得が低い地域です。まず、子育て世帯の経済状況を調べてみました。
 親の収入を示す保育料階層区分の世帯割合のデータを飯伊地域の全市町村に依頼。回答があった自治体のうち、三歳以上の子を育てている世帯の約一割が非課税世帯だと分かりました。「三歳未満の子」の世帯になるとさらに高まり、二割近くが非課税だった自治体まで。もっと詳しく地域を知ろうと、飯田市議会議員になった元職員から、地域の状況や子育て世帯の社会保障制度などを聞きました。
 就学援助を利用中の母子世帯にも話を聞きました。「給食費や学用品費の毎月の支払いに困っているのに、支払ってから四カ月まとめて後から支給されるのでは困る」。その声を市議会議員に届けると一六年一二月議会で取りあげ、翌年度から申請は入学前の一月に、入学準備金は三月に二万四七〇円が支給されることに。書類も改善され、申請しやすくなりました。
 地域で一番大きい飯田市を動かしたことは、近隣の自治体にも好影響。なんと二町二村で一七年度から、一町で一八年度から事前支給となりました。

■一歩ずつでも改善したい

 「本当は、償還払いそのものを変えたかった」と北原さん。研修メンバーの下島隆宏さんは「自治体にとっても支給時期をずらすだけで予算を変えないので改善しやすかったのかも。一歩ずつ良くすることも大事」と話しました。
 篠田明香さんは、「困っている人の声をつかんで、伝えないといけないと学んだ」と振り返りました。「子どもの貧困は社会に知られるようになった。世論をつくれば制度も変えやすい」と伊藤さん。

■「皆で学ぶ時間が大切」

 今の事務研修制度は、当初四年目グループまでしかありませんでしたが、改善を重ねて現在の形になりました。
 ベテラン年少グループで、全体の事務研修委員でもある唐澤啓樹さんは、「自分たちでテーマを決めると、研修が主体的になる。たくさんの視点で捉えられ、一人で学ぶよりも広く深く学べる」と研修手法の長所を話しました。グループ内で一番若手の安田愛さんは、「業務中は立ち止まって考える時間は少ない。たった一時間でも、仲間と話すこの時間が大切」。ベテランになっても研修に意義があることを強調しました。

*    *

 一七年度もテーマに貧困を据え、一人一回ずつ研修を担当し気になる話題をまとめて報告しています。取材した日は、貧困や格差に注目した文献が近年急増していることが話題になりました。日本の科研費研究も紹介され、「税金を使って研究しているのに、政策に反映されていない」と発表者の小林研一さんが報告しました。
 同世代のため、意見や感想が次々出ます。「政府は助け合いを強調するけど、高齢化がすすみ、地域でささえてくれていた人がだんだん助けが必要になってきて、“共助”なんて難しい」、「忙しく働く家庭ほど、保育園のお迎え時間が遅くなる。他のお母さんと会う機会も少なく、助けてもらいにくい環境では」と、身近な経験もふまえて交流しました。

(民医連新聞 第1659号 2018年1月1日)