相談室日誌 連載436 身寄りのない青年を援助して~保証人の問題(山形)
ある日、「生活困窮者支援法」に基づく生活サポート相談窓口から、受診の相談がありました。観光宿泊施設に住み込みで働いていたが、腹痛で就労に支障があり、解雇されたという二〇代前半の男性でした。原因不明の腹痛が当地に来る前からあり、前の職場でも同様に解雇されたといいます。所持金もなく、相談に至るまでの数日は路上生活でした。
即日受診・入院の上、生活保護を申請しました。検査の結果、深刻な異状は認められませんでした。ですが、彼の背景は複雑でした。
両親は幼少期に離婚。母親には精神疾患があり生活保護を受給中、姉と父親は音信不通という状態でした。親子関係の葛藤があり、高校卒業後は家を出て、必死に生きてきました。
本人は少しでも早く自活できるよう当地でがんばりたい、と意欲を見せました。生活保護が決定したため、心理的サポートをしながら、生活拠点を定めることを焦点に、SWと生活サポート相談窓口と協働で、第二段階の支援を開始しました。
そこで直面した課題は借家の「保証人」でした。「生活保護の母親は保証人には認められない」と複数回、入居を断られました。物件所有者がリスクを回避したいという意向は理解できなくはないものの、青年の将来を閉ざすわけにはいかないと援助者も必死にとりくみました。 結果、理解ある不動産業者に巡り合い、住まいを確保し、退院できました。社会は保証人によるリスク回避を求めるのだと実感しました。
様々な事情で保証人を確保できない人はいます。そのためにその人の権利が阻害されてはなりません。ですが現在、身寄りのない人を救済できる明確な制度は当地にはありません。
どのような状態でも安心して暮らせる社会をつくるためには、年代を問わず身寄りのない人をささえる制度やサービス体系など、社会資源が必要です。そのためにはひとつひとつの事例から課題を抽出し、社会に働きかけていきたいと考えています。
(民医連新聞 第1657号 2017年12月4日)