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民医連新聞

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第13回 全日本民医連 学術・運動 交流集会 茨城 地方を切り捨てる「地方創生」 住民参画のまちづくりを 中山徹さんの記念講演から

 全体会では、奈良女子大学大学院の中山徹教授が「政府がすすめる地域の再編に対して、安心して暮らし続けられる地域をどう展望すべきか」と題して記念講演をしました。要旨を紹介します。(丸山聡子記者)

 日本の人口は減り続けています。二〇〇八年をピークに一億二八〇〇万人まで急増した後は減少に転じ、一〇〇年後には一〇〇年前(四〇〇〇万人)に戻ると予想されています。二〇世紀に人口増加率世界一だった日本は、二一世紀には減少率で世界一です。
 二〇六〇年代以降、高齢化率は四〇%前後で推移し、現在一三%の中学生以下の年少人口比率は、八%まで低下する推計です(国立社会保障・人口問題研究所)。日本は高齢化率は世界一高く、年少人口比率は世界一低いのです。
 人口減少をどう食い止めるかが課題ですが、子どもを産みやすい年齢層の人口が減ると、出生率を上げるだけでは足りません。

■かつてない国土改造

 東京は一三〇〇万人都市ですが、世界でもっとも人口が増えている地域のアジアにはそれを超える二〇〇〇万人の都市が三つあります(カラチ、北京、上海)。
 こうしたことを踏まえて安倍政権は、首都圏の国際競争力強化と地方再編を打ち出しました。「日本の企業が今後も国際競争に勝ち抜けるように」というのが目的で、国際競争に勝って、地方に富をトリクルダウンするという発想。これまでの全国均一の国土改造計画とは違うのです。
 しかし東京だけでは厳しい。そこで、リニアで名古屋、大阪をつないで一つの都市圏とする計画も。三都の人口は五〇〇〇万人で世界一となります。
 東京五輪に一兆円、豊洲市場移転で六〇〇〇億円、首都高の地下化工事に五〇〇〇億円など都市部の再開発に膨大な投資をしているのも、人口が減っても大手ゼネコンなど産業の儲け口は確保しようというねらいです。
 一方、全国の急激な人口減の中で首都圏だけ人口減少率を五%に留めようとすれば、地方はスカスカになります。東北や山陰地方では四割減の予測も。「それでも生き残れるよう地域を作り替えろ」との国の指示が「地方創生」です。
 キーワードは「コンパクト」と「連携」。拠点となる中枢都市は市街地を縮小し、他の小さな自治体は拠点市と交通網でつなぎ、連携して生き残る。医療は国保の都道府県単位化と病床削減、介護では軽度者を介護保険から外し、地域の助け合いに丸投げ。NPOや企業の力で再編する。注目されている「ソーシャルビジネス」は、補助金なしで活動ができ、行政の負担を減らす意味もあります。
 自治体の状況は二つの典型に大別できます。一つは「開発型」。人口減で生じる問題を大型開発で乗り切るもの。住民サービスを削って捻出した予算をつぎ込んだ開発に失敗すれば、負債を抱え住民サービスはさらに減らさざるを得ない。九〇年代にもありましたが、自治体消滅を導きます。
 もう一つは「歳出削減型」。歳出削減に邁進(まいしん)し、将来の展望はありません。

■「市民共同自治体」へ

 放置できない地域の現状に、住民自身が積極的にかかわることが大事です。
 自治体がとりくむべき課題は「格差の是正」です。地域経済低迷の最大の原因は個人消費の落ち込みであり、格差の是正なくして地域経済の活性化はありません。社会保障の充実は暮らしをささえ、安定した雇用を確保します。教育の条件整備は子どもの貧困を解決するためにも不可欠です。
 次に、行政の地域化と生活圏の整備です。
 自治体の施策が住民の要求からかけ離れています。住民要求を自治体に反映させるため、自治体職員に地域に出るよう要求する。同時に、住民が行政運営に積極的に参画することです。
 「生活圏」とは歩いて行ける範囲で、都市部なら小学校区が目安です。そこに学校や医療機関、公共施設、保育園など子育ての拠点、高齢者、障害者施設の整備が必要です。安心して子育てでき、老いても暮らし続けられる地域の基盤であり、行政の拠点も必要です。
 民医連は地域になくてはならない医療機関として、住民の暮らしを医療や福祉面からささえ、住民の実態や願いを発信し、自治体づくりに参画してください。

(民医連新聞 第1655号 2017年11月6日)