第13回 全日本民医連 学術・運動 交流集会 茨城 テーマ別セッション2 語ろう憲法の魅力~みて・きいて・考えて、わたしの一歩をふみだそう~
テーマ別セッション2のテーマは「憲法」。九〇人が参加しました。職場・地域の事例から憲法を学び、深め、職員の当事者性を育むことが目標。中野晃一教授(上智大)と、本紙号外「憲法Cafè」でおなじみの白神優理子弁護士を招きミニ講演を聞きました。
(丸山いぶき記者)
全日本民医連の土井康文事務局次長が「総選挙、核兵器廃絶国際キャンペーンICANのノーベル平和賞受賞という情勢に沿う企画。憲法の魅力を学び、自分の言葉で広げましょう」と開会あいさつしました。
白神弁護士の話は、「憲法を学び語る意義―日本国憲法こそ希望」がテーマ。「憲法の“心臓”一三条(個人の尊重)をささえるのが九条と二五条。これらは声をあげたたかう人がいて本物になってきました。憲法は、『社会は変えられる』『人間の歴史は前進してきた』と示している希望。民医連の活動もまさに、憲法を本物にするたたかい」と語りました。中野教授の講演は「世界と日本の情勢の中で憲法を捉える」でした。
続いて、論点整理、三本の指定報告「経済的事由による手遅れ死亡事例調査福岡県連社保闘争委員会」「楽しく学ぶ平和学校の紹介(千葉)」「Peace Action from Gunma (群馬)」、を経て全体討論へ。「政治的中立でいたい」という職員へのアプローチの仕方、自衛隊容認論になんと答えるか、などで意見を交わしました。
中野晃一教授 講演
「世界と日本の情勢の中で憲法を捉える」
■「壊憲」をめぐる歴史
日本では、戦後すぐから改憲派と護憲派の攻防が繰り広げられてきました。変化があったのは東西冷戦の最終盤期(一九八〇年代)。背景に新自由主義的改革路線と湾岸危機(九〇~九一年)以降の「国際貢献論」があります。
冷戦期、日本では、保守と革新の二極対立で、革新勢力はブレーキとして機能しました。政権に居続けたい保守は、改憲論を持ち出せず、金権政治を行いながらも、不満を抑えるために最低限の社会保障は維持していました。
しかし、ベルリンの壁崩壊や天安門事件など、冷戦期のこう着から自由を求める動きが世界的に加速する一方、経済的自由(新自由主義)も前面に押し出され、利益追求や自己責任論が出現します。日本では湾岸危機以降、直接日本と関わりのない国際紛争で何をするかという「国際貢献論」が持ち上がり、憲法九条の議論も“集団的自衛権”に及びはじめました。
新自由主義的改革を主張する保守勢力が、グローバル企業の利権第一の政治に転換し、自己責任、弱者切り捨ての政策を推進しました。その結果、先進国でも格差が拡大。生じた矛盾はナショナリズムで乗り切ろうとしています。
彼らにとって、選挙で勝っても思い通りにならない「立憲主義」や「法の支配」は、邪魔でしかない。そのために自ら法に背き、「実態に合わない」として法を変える手法が、労働法制や憲法九条でも行われています。また、権力を集中するために小選挙区制が重要な役割を果たしていますが、そのせいで少数になっている野党の追及さえ「面倒」、「国会すら邪魔」というのが安倍首相です。
■私たちの課題
改憲論は、本当に馬鹿げています。「七〇年間手術していないから、そろそろ手術しましょう」と言うようなもの。しかも、本当は心臓を切りたいのに、「とりあえず二重まぶたにしてみよう」というように、九条改憲をねらいながら、「もう古い。新しい権利を」などと論点を分散させています。
平和や憲法、民主主義、自由がなぜか古くさい、あるいは行き渡っていないことに幻滅し、「そんなものは嘘だ」とぶっ壊す者が拍手喝采を浴びる。残念ですが、そんな時代なのかもしれません。
安倍政権は、国難突破といいながら「立憲主義」や「法の支配」の制約を次々突破し、権力者や金持ちのための政策をすすめ、都合が悪くなれば国旗を振り「北朝鮮や中国が危ない」とあおります。
これに踊らされず、物事の本質をとらえ伝えていけるか。こちらの主張を生き生きと、個人の生の言葉で伝え、すぐには変わらなくても将来につながる種をまけるか。私たちに問われています。
(民医連新聞 第1655号 2017年11月6日)