相談室日誌 連載434 本人の思いに連携して寄り添って(富山)
富山市長寿福祉課からの電話で八〇代のAさん(男性)とつながりました。「B県で物損事故を起こし、養護老人ホームで保護されているが、富山へ戻るので一緒に対応してほしい」との相談でした。離婚後独りだったAさんは子どもたちとも交流がなく、息子は受け入れ拒否。市職員の付き添いで富山に戻り、今後のことを本人、市職員、包括職員と話し合いました。
受け答えが曖昧で自宅へ戻すのが不安だったため、当面の間、養護老人ホームに入所してはと提案しましたが、本人の意思が固く、自宅へ戻りました。翌日、市職員と自宅を訪問すると、物が散乱し足の踏み場もない状態でした。
自宅での生活には介護保険の利用が必要だと説明し、要介護認定を申請。掃除や安否確認を目的に週二回の訪問介護が始まりました。しかし、本人は「自分でできる」と数カ月で中止。家の中は立ち入れないほど荒れてしまいました。その後、腰痛で動けなくなってから訪問介護を再開すると、家屋の故障や片付けるものが多すぎてヘルパーだけでは対応しきれません。住環境を整えることを最優先に、市職員や担当ケアマネ、包括職員、医療生協のボランティア、ヘルパーの総勢一二人で掃除、除草、大量のゴミ捨てをしました。この大掃除で信頼関係が築かれ、Aさんはケアマネやヘルパーを受け入れるようになりました。
造園業を営み、自分で建てた家や庭への思い入れが強いAさん、週三回の訪問介護と通所介護、配食サービスを利用し、在宅生活を続けています。息子たちとは今も絶縁状態で軽度の認知症もあるため成年後見制度の相談を始めています。定期的にケアマネが市職員、包括職員、サービス担当者と話し合い、本人の状態の情報共有や、思いに寄り添い支援するにはどうすれば良いかを検討しています。定期的に医療生協のボランティアさんが草刈りや庭掃除などで訪れるようになり、つながりは広がっています。今後も連携を強め、Aさんの生活をささえていきたいと思います。
(民医連新聞 第1654号 2017年10月16日)