特集・総選挙 投票へ行こう! 10・22 安倍政権をチェック!くらし・憲法 安倍政権のもとで、厳しくなった私たちのくらし
第二次安倍政権になって五年。私たちのくらしはどうなったでしょうか? 自身の経済政策を「アベノミクス」と名付け、二〇一二年からは「三本の矢」で経済再建を、一五年からは「新三本の矢」で「一億総活躍社会」をすすめてきました。世界一企業が活躍できる国をめざし、まず企業に儲けさせ、そのおこぼれを庶民に行き渡らせる「トリクルダウン」を唱えましたが、現実は―。データで見ていきます。(土屋結記者)
消費税は社会保障のため?
安倍首相は、「消費税を一〇%に増税し、増加分は子ども、子育て世代向けにまわす」と言っています。本当でしょうか?
実は、一九八九年に消費税を導入する時にも「社会保障のため」としていました。しかし表を見て分かるとおり、消費税導入前と比べて社会保障は悪くなる一方。それは、消費税増税と同時に、大企業や富裕層向けには減税しているからです。導入時にも法人税、所得税、相続税など減税し、今も「世界で一番企業が活躍しやすい国」とのかけ声で減税を続け、大企業の税負担を四兆円も減らしました。
税の原則は支払い能力に応じて負担する「応能負担」です。「社会保障のため」と言うのであれば、低所得者ほど負担が大きくなる不公平な消費税をあらため、高所得者にも応分の負担を求めるべきです。
実質賃金は下降
実質賃金は下がり続けています。民主党政権下の二〇一〇年を一〇〇とすると一三~一五年は下がり続け、一六年に少し上昇していますが元には戻っていません。
二〇一二年の民間の平均給与四〇八万円を当てはめてみると、アベノミクスで消えた給与は年額一六万円にもなります(下図)。
格差の拡大
「景気拡大が続き、戦後二番目の好景気を超える」とも言われています。では、景気拡大で増えた富は、誰のもとへ行ったのか。答えは「富裕層」。一二年から富裕層上位四〇人の資産が増え続け、一七年には倍増し過去最大に。
一方で、貯蓄ゼロの世帯は増加しています。一六年には一二年と比べて四二七・四万世帯も増えました。給与は下がり、貯蓄も減った―。「トリクルダウン」など起きていないのです。
軍事費は過去最高に
毎年軍事費は増えています。その陰で、文教予算は削減される一方。安倍首相は「高等教育の無償化」を訴えていますが、教育予算を減らし続けてきたのが実態です(下図)。
「無償化のために憲法改正」とも言いますが、民主党政権が実施した高校無償化を廃止したのも安倍政権です。高校無償化に必要な予算は約三三〇〇億円。軍事費を戻すだけで、憲法を変えなくても今すぐに実現します。
高齢者の貧困
高齢者の貧困は深刻化しています。左下の表は立命館大学の唐鎌直義教授の分析。六五歳以上の高齢者がいる世帯の貧困率は二七%。〇九年と比べて二・三%も増え、六五三万世帯にもなります。
安倍首相は「全世代型の社会保障に改革する」と強調し、高齢者向けの社会保障をあらためようとしています。しかし、いま必要なのは貧困な高齢者への施策と、どの世代にも手厚い社会保障をつくることです。
(民医連新聞 第1654号 2017年10月16日)