「総がかり」で守ろう いのち くらし 首都圏青年ユニオン事務局長 山田真吾さん #最低賃金1500円になったら から見えた医療と非正規労働者
総がかりで社会保障の危機に立ち向かおう―。今回は、首都圏青年ユニオン(組合員数約三五〇人)の山田真吾事務局長です。若者が中心の運動組織AEQUITAS/エキタスが、ツイッターで「#最低賃金1500円になったら」と声を募ると、「病院に行く」という投稿が目立ちました。医療はそんなに遠いの? 非正規労働者にも社会保障は大切です。(丸山いぶき記者)
「#最低賃金1500円になったら」は、二〇一六年春にツイッターで呼びかけ、トレンドワードになりました。
私たちは、「最賃をまず一〇〇〇円、そして一五〇〇円へ」と求めていますが、時給一五〇〇円は、一日八時間、月二二日勤務で年収約三一六万円です。時給なら多くみえても、年収になると少なく感じませんか? 今年の最低賃金は、東京の九五八円が最高で、最低の沖縄など八県は七三七円。これでは、くらしの見通しが立ちません。
「病院に行く」というツイートが目立ちました。時間も医療費もない、保険証がない、などが理由です。
医療費は突然降りかかる出費です。非正規労働者にとって病院は、怖くて遠い場所。「会社に健診を受けるよう言われたが、どうしたら回避できますか?」という相談も入ります。
■過労死が身近な問題
首都圏青年ユニオンには、低賃金でダブル、トリプルワーク、ブラックな働かされ方という相談が寄せられます。多くは非正規ですが、正規の労働環境も健康を損なうほど劣悪です。
「八時間で仕事が終わったら、何がしたい?」というアンケートで多かった回答は「ゆっくり寝たい」。人手不足、長時間労働で睡眠時間の確保も難しい。食事に気を遣う余裕もない。肉や魚、野菜が高くて買えないだけでなく、皿を洗う時間、買い物の時間も削って眠りたいというのです。
これでは病気になりやすい。でも病院に行けない。正規・非正規問わず“過労死”は身近な問題です。
労働相談なのに、「どうしたら良いお医者さんを見つけられるか?」と聞かれることがあります。労働と健康、医療がこれだけ密接に関連していると、どこに相談すればいいか分からない人も多いはず。解決すべきは労働問題だけではないと痛感します。組合員には「健診行ってる?」と声をかけ、相談では、所持金や家賃滞納がないか、も聞きます。企業の中で活動する労働組合と違い、そこにもたどりつけない人をどう助けるか、どういのちをつなぐかを考える日々です。
■ともに政治を変える
正社員すら不安定な社会で、社会保険や雇用保険のない非正規労働者は追い込まれています。
「アベノミクスの成功で有効求人倍率と賃金が上がった」といいますが、アベノミクスで精神疾患や過労死が増え、労災申請件数が増えた事は語られません。「働き方改革」や「社会保障費の抑制」で矛盾は解決せず、「社会保障はまず自助・共助」「自己責任」というスローガンも、「国の役割放棄」に過ぎません。
声のあげづらさが社会にまん延しています。今の生活が苦しい人に政治を語っても響きません。問題の根本に政治のゆがみがあると粘り強く伝え、「おかしい」と声をあげられるよう「あなたの権利を守るために労働組合はある」と伝えていく必要性を感じています。
医療現場でも、病院に来られない人の存在を念頭に無理しなくていいよ、と発信してほしい。私もツイッターで定期的に民医連の無低診のリンクを発信していますが、「なぜ民医連の病院が地元にないんだ」といった反響があります。事業所に労働局のポスターを張り、労働相談窓口を伝えるのもいいですね。
問題が複雑に絡み合う中、現場から実情を訴えることは力になります。統計で見えない世界を、それぞれの現場から社会に、そして政治に届けましょう。
「#最低賃金1500円になったら」の声から
・病院に行きたい、しんどいときに何も考えず病院に…
・一度ぐらい風邪引いて病院行っても食費に困らない、一度ぐらい風邪や体調不調で仕事を休んでも次の月生活に困らない、転職が出来る
・子供にもう少し肉や魚を食べさせてあげられる。歯医者に行く。貯金出来る
(民医連新聞 第1653号 2017年10月2日)