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民医連新聞

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安倍内閣の社会保障政策は“人ごと・丸投げ強制社会”への道

 安倍首相は解散・総選挙を行うと表明しました(一〇月二二日投開票)。社会保障改悪で負担増とサービス削減を繰り返した安倍政権。解散の理由について「一〇%に上げる消費税の使い道を教育や子育てに変更。その信を問う」としました。選挙は税と社会保障を問うものに。ところがその内実は、大企業や富裕層の税負担を軽減したまま、国民にまた負担増を迫るものです。社保委員長会議(九月一六~一七日)で行われた佛教大学の岡﨑祐司教授の学習講演「医療制度・介護保険制度改革のゆくえと地域の運動について」から、社会保障改革の部分を中心に考えます。(丸山聡子記者)

佛教大学教授 岡﨑祐司さん 講演から

 安倍政権の社会保障改革には、三つの狙いがあります。(1)国家財政と大企業の負担を抑制する↓共助を強調し、国民負担を増大させる、(2)医療、介護+生活支援を営利主義化し、新たな投資領域として再開発。また、(1)、(2)の施策をすすめても耐えうる地域づくりとして、(3)新自由主義改革・グローバル競争に適応した地域づくり、です。これらをすすめるため、「総活躍」「地域共生社会」という新しいフレーズを使ったキャンペーン型政治が行われています。
 しかし、この改革は、貧困・社会問題を深刻化し、社会保障を権利抜きの共助責任型へ変質させ、強者の論理による同調強要と排除をすすめます。一人ひとりが尊重され、人権が保障される社会とは真っ向から対立するものです。

「全世代型社会保障」とは

 安倍政権が打ち出す「一億総括役路線」と厚労省のいう「地域共生社会」という二つの路線のもとで、日本の社会保障制度はどうなるのか。安倍政権は改革のキーワードに「全世代型社会保障」を掲げました。
 「社会保障予算は高齢者にシフトしすぎていて、若い世代に回らない」との宣伝は国民に浸透しています。九月一一日の「人生100年時代構想会議」の第一回会議で、安倍首相は「全世代型社会保障への改革」に言及し、「若い世代への公的支援の充実」を挙げました。財源についても“議論”を呼びかけました。
 この会議で「社会保障を若い世代にシフトする必要がある。その財源のために消費税増税が必要」との結論を導くのが狙いです。それだけでなく、高齢者の福祉の削減、負担増も予想されます。

「一億総活躍」と「地域共生社会」

 安倍政権は、安保法制(戦争法)強行採決直後の二〇一五年一〇月、「ニッポン一億総活躍プラン」の基本方針を閣議決定し、翌一一月には「一億総活躍国民会議」を発足させました。
 「一億総活躍プラン」は、「少子高齢化に死に物狂いでとりくんでいかない限り、日本への持続的な投資は期待できない」とあおり、「介護離職ゼロ」や障害者、難病患者の活躍支援、地域共生社会の実現などを掲げています。
 ここでは「一度失敗した人も包摂され活躍できる社会」を強調していますが、それを実現するには、公的な社会保障基盤が欠かせません。しかし、プランには公的責任や社会保障制度の充実は一つも入っていません。
 彼らの「全員参加型の経済社会」とは、新自由主義の生存競争に参加し、その荒波に耐えて自立することであり、そうした改革に貢献することこそ「活躍」だ、というもの。どんな人にも広く社会に参加することを保障するという目標ではありません。
 そこで持ち出されたのが、「地域共生社会」です。新自由主義的改革で社会保障が後退しても疲弊せず、耐えられる地域となるように考え出されました。

異常事態が起きている

 改革の二つの牽引車が「地域包括ケアシステム」と「我が事・丸ごと地域共生社会路線」です。「我が事・丸ごと地域共生社会」の内容を見ると、まるで「人ごと・丸投げ強制社会」です。
 今年四月には、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が強行されました。名称でも分かる通り、改正の趣旨は「地域包括ケアシステムの強化」です。
 四月に施行された改正社会福祉法にも問題があります。地域住民に「地域の問題を把握し、関係機関と連携して問題解決を図るよう」求めています(第四条)。一方で国と地方公共団体の責務として、「地域住民が問題解決を図るのを促進する施策や措置を講ずること」とあります。
 日本の社会福祉制度には、行政に地域の問題を把握する義務を課した法律はひとつもありません。これ自体が大きな問題ですが、改正法は行政に義務を負わせずに、公務員でも専門家でもない一般の地域住民に義務を課すという“異常な事態”なのです。
 また、貧困と格差の拡大や、社会保障制度の後退や不備によって発生している問題を「人と人とのつながり」が希薄になっているせいだとすり替え、地域全体で連帯し、とりくむべきと強調。行政と専門職が力を合わせて解決すべき問題を「地域のつながり」で解決させようとする姿勢は、専門性を否定することでもあります。
本当の「共生」めざすには
 政府の言う「共生」には、「共に存在する」という意味しかありません。古い共同体論と結びつき、人と人のつながりを強調する共生論は、個人の尊重と対立します。
 こうした「地域共生社会」に抗し、本当に「共生できる」地域をつくるには、安倍政権がめざす新自由主義改革をストップさせ、新しい平和・福祉国家へ転換すること、立憲主義を守り、軍事優先ではなく、個人の自由と多様性が保障される社会の実現が必要です。

長野 社保改悪の全体像学ぶパンフを作成

 会議の指定報告でも紹介されましたが、長野県民医連では、「知ることからはじめる『医療と介護の一体改革』学習パンフ」を作成し、これを使った学習会を県内各地で開いています。22ページ立てで全体像から各論が分かる仕組み。政府の発表資料も掲載。

(民医連新聞 第1653号 2017年10月2日)