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民医連新聞

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「総がかり」で守ろう いのちくらし 日本障害者センター事務局長(障全協事務局次長) 家平悟さん 「丸ごと」の社会保障削減策には運動も「丸ごと」で

 政府はいままで以上の社会保障削減策をすすめています。いのちの危機に多くの人と総がかりで立ち向かおう―。三人目は、NPO法人日本障害者センターの家平悟事務局長。五月に社会保障の充実を求め東京で開かれた集会では「介護保険優先原則」で六五歳を迎えた障害者に起きる「六五歳の壁」の問題や介護保険のあり方を語りました。(木下直子記者)

 障害者は、障害者総合支援法に基づくサービスを受けています。六五歳を迎えると「介護保険で同等のサービスがある場合は介護保険を優先的に使う」というルールがあります。総合支援法では、低所得者の利用料はゼロ。ところが介護保険は利用料一割負担。「六五歳の壁」とはそこに関わって起きる問題です。

人権を求めて

 総合支援法の前の法律「障害者自立支援法」では、応益負担(サービスを受けた量だけ負担する)の発想が入りました。それまで障害者の九割五分が負担ゼロで支援制度を利用していたのが逆転した形です。
 障害者は低所得です。例えば、共同作業所の月給は平均一・五万円。差し引きで利用料の方が高くなる。障害者は支援を利用して初めて障害のない人と同じスタートラインに立てます。僕もヘルパーさんの手助けで身支度します。例えば、視覚障害者が外出する時はガイドヘルパーを頼みますが、「歩くためにお金を払うの?」ということです。
 僕らはこうした矛盾を国に問う訴訟を起こし、民主党政権時に和解、国も謝罪し「基本合意」を結びました。そして低所得者から利用料を無料にしました。

「自立」2つの意味

 ようやく人権を認められたと思ったら、再浮上したのが六五歳問題です。歳をとると半強制的に介護保険に移され、一割負担が発生することになる。また、負担増だけでなく、支援の質まで変化します。
 「居宅介護」という同名のサービスが障害にも介護にもありますが、障害者支援は「本人ができないことをする」支援で、介護のような制約はありません。「自立」の意味も違う。障害者分野では、社会参加を「自立」、介護保険ではサービスを止めることを「自立」と呼びますね。この違い、制度が権利保障として位置づいているかどうかに根っこがあると思います。
 六五歳問題は「介護保険制度はこれでいいのか?」という疑問を浮かび上がらせました。「介護保険優先原則を無くせ」と求めるとともに「介護を権利保障の制度に。障害者福祉に近づけよう」と言いたい。
 年寄りだから、もういいんじゃないか―。そんなことを言うような制度は、貧しい社会をつくります。

「地域共生社会」のこと

 通常国会で「介護保険等改正法案」が成立しました。厚労省が「地域包括ケア強化法」と呼ぶものです。障害者にも関わる「我が事・丸ごと」地域共生社会の政策が入っています。「タテ割りをなくす」など良いことも入って、地域活動に熱心で良心的な人ほど納得するでしょう。ただ、それらをどう保障するかについては、触れられていません。
 月に数回の移送サービスは、遊びなら使えます。でも毎日の通学の移送はどうか。日常生活の支援がボランティアで良いか? 本質から考えないと「公的責任を減らすための市民の協力」にしかなりません。子ども・障害者・高齢者とそれぞれ課題が違う人の支援を一括する話も、安上がり福祉になりかねません。
 これらのサービスの実施主体は市町村とされています。国はこれで自らの責任を絶とうというのです。だから運動は、実践に基づいた要求で、地元自治体を巻き込む必要があります。現政権が「丸ごと」社会保障費削減を狙うなら、運動も「丸ごと」でやりましょう。

いえひら・さとる…一九七一年大阪生まれ。事故のため一五歳で障害者に。自立支援法違憲訴訟東京元原告

(民医連新聞 第1647号 2017年7月3日)