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民医連新聞

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きかせて! どんな「職場づくり」してる? 栃木・宇都宮協立診療所 医事課 事務が始め、全職場でも――噂の「気にカン」すすめ方のコツ

 職場づくりのページ、今月は、栃木・宇都宮協立診療所の医事課の「気になる患者カンファレンス」について。「気にカン」を続けるうちに、事務集団が地域医療を担う診療所の一員へ変わってきたといい、注目されています。「真似したいけど、どうすれば?」という仲間のために、仕掛け人・同診事務次長の大野学さんに聞きました。

 同診の医事課が気にカンを始めて一年半になりました。診療所は病院より規模は小さいものの、事務一人が担う実務作業は繁雑です。「受付をしながら電話をとり、会計して、レセプトもして…そればかり考えていると、患者さんに目が行かない。会議の話題もシステムや請求のことばかりになって」と大野さん。この状況をどうすれば良いだろう? と考えていたところ、ほかの民医連診療所で行っている「気になる患者カンファレンス」を知り、始めることにしました。

■パスなし、全員発言

 「気にカン」は週一度の事務の会議の中で行っています。会計と受付に残るメンバーをのぞき六、七人が出席。非常勤も含め全員が報告します。「パス」や「気になる人はありません」は無し。各自で書き込む「検討シート」も用意しています。
 「始めた頃は、構えすぎて出しにくい雰囲気もありました。でもいまは自分たちが難しいことをしている感覚はありません。具体的ではないが、とにかく気になった患者さんの名前を出すだけというのもOK」と大野さん。名前が出れば他の同僚から「そういえばその人は―」と、その患者さんの情報が肉付けされることもしばしば。

* *

 「受付で預かった母子手帳に予防接種をした記録がなかった」という報告から、患児の親には支援が必要だと分かり、その後はこまめに連絡することにしたケースがありました。患者さんから持ち込まれた知人の相談を介護保険の利用につないだり、経済的困難を抱えていそうな患者さんに無料低額診療事業を紹介したり。気にカンで解決に至ったドラマチックなエピソードはありませんが、問題のキャッチから他職種と共有して対応するスピードは確実にあがりました。
 事務の会議時間は一時間、この約半分を「気にカン」に使いますが、議題が多い回はできない場合も。そんな時は、次の会議の最初の議題にまわし、必ず行うようにしています。

■自らの役割や誇りを

 「患者さんの背景を見よう」と医師や看護師に言われても、イメージできなかった状態から、気にカンを繰り返すことで、患者さんの家族関係や、これまでの人生に目がいくようになりました。若手が「患者に寄り添う」という感覚をつかむ場になっています。
 また、大野さんたち職責者には「人を育てる職場づくりをしている」という実感が。小さな事業所で、人前で話す機会のなかった仲間たちが、自分の意見を言うようになりました。意見を共有するというコミュニケーションを通じ、互いへの信頼も生まれます。
 「目の前にこういう患者さんが居るけれど、私は何をしたらいいか―。自分の役割を考える機会は、気にカンがなければ持てなかった。民医連綱領を読むだけでは養えないことだと思います」と大野さん。
 昨年六月に診療所全体の気にカン(第五水曜のある月に実施)も始め、事務が各グループの中心に。ここでは、地域の中の診療所の役割や、弱い人たちのために働く誇りも見つけています。「医師や看護、他の職種が事務を見守ってくれているのも感じる場です」。

【職場データ】
事業所)有床診療所
      (病床数19)
事務職員)
総 数:10人
    (うち非常勤3人)
男女比:女8 男2
経験年数:10年以上2人
    5~10年未満5人
       5年未満3人
事務部会:時間内に週1回
       (1時間程度)

 職場の悩みを教えてください。会議を上手にすすめるには? 同僚との意思疎通、学習法…。また「こんな悩みをこう解決した」などの経験や「元気なこの職場を取材して」などの情報も歓迎です。第3週発行のこの紙面で考えます。
◆「職場づくりのページ」あて
 min-shinbun@min-iren.gr.jp
 FAX:03(54842)6451

(民医連新聞 第1645号 2017年6月19日)