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民医連新聞

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相談室日誌 連載429 あいつぐ制度改悪から利用者を守るために(石川)

 やすらぎ福祉会では、二〇一五~一六年の介護保険制度改定の影響を事例集『酷書』として、発信してきました。その中から紹介します。
 Aさんはユニット型特養に、その夫は多床室の老人保健施設に入居中です。これまでAさんは施設の食費や居住費が軽減される補足給付第2段階でしたが、制度改定で補足給付の要件が厳格化された影響を受け、夫が市民税課税のため、対象から外されてしまいました。さらに夫には二割負担の通知が。夫婦の年金の範囲で両施設の支払いができていましたが、改定後はそれを超える負担額になってしまいました。認知症があるAさん夫婦は、在宅時に何度も訪問販売に引っ掛かり、預貯金がほとんどありません。
 家族からの相談で行政にかけあうと、「いまのユニット型特養から料金の安い従来型特養の多床室に移っては?」という提案が。家族は「住み慣れた特養だからこそ母が笑顔になれる。他所への転居は考えられない」と断りました。
 そこで、課税層でも要件を満たせば特例的に補足給付の対象になる制度「特例減額措置」を使い、なんとか施設利用料が年金内に納まりました。それでも年間四四万円もの負担増。利用料以外に医療費や日用品費、税金など必要な出費があるため、経済的な不安は続いています。
 介護保険制度が始まって一六年が経過するにも関わらず、この特例減額措置の適用は中核市である当市で初めての事例でした。特例減額措置の要件が厳しいため、「これまで何件も相談はあったが、適用に至らなかった」と行政職員は話していましたが、そもそも制度を活用する前に住み慣れた施設の移動を提案する事は、利用者の人権を軽視した対応であり、制度活用の抑制とも言えます。
 介護保険制度は今後さらなる改定が待ち受けていますが、その中でAさん夫婦のように制度の狭間で苦しむ人も出てきます。制度の問題点を認識し、利用者や家族の想いに寄り添いながら安心した生活や人権を守る視点を持って支援していきたいと思います。

(民医連新聞 第1645号 2017年6月19日)