副作用モニター情報〈479〉 血栓予防剤イグザレルトによる出血
リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)は、「血液検査不要」「納豆を食べられる」という触れ込みでワルファリンの代替薬として注目された血液凝固阻害剤(Xa阻害剤)です。血液検査で効力推定が困難なこと、薬効を弱める拮抗剤がないなど、安全面の問題が指摘されています。本剤による出血関連の副作用報告の傾向を調べてみました。
当モニターに2012年の発売から2017年1月までに集積された症例は、30例39件でした。死亡症例はありませんでしたが、出血事例は血尿が6件、歯肉出血3件を含む口腔内出血5件、脳出血1件、血精子症1件、下血1件、皮下出血1件の合計15件で、血尿と口腔内出血が目立ちました。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)に集積された症例の一覧では、出血事例は様々な部位に及ぶものでした。中でも多いのが脳出血と消化管出血、皮下出血です。命に関わる脳出血が多いのは見逃せません。死亡症例は、イグザレルトでは発売から2015年末までに275例。一方、ワルファリンでは2010~2016年6月の6年半で123例でした。ワルファリンでも危険はありますが、イグザレルトよりは安全に管理できると解釈できます。
血液が凝固するしくみは複雑ですが、それは血液の性状を厳密に制御しなければならないからで、人為的にコントロールする際は細心の注意を払うべきです。
血液凝固能を見積もるINR値は絶対的な指標にはなりませんが、本剤の承認時の評価資料にあるイグザレルト服用後の平均INR時間推移をみると、最大値は約3時間後に2.0~2.2で、治療域の1.7~2.6に入っているのは約1~7.5時間で、血中濃度に依存して変化しています。ばらつきを考えると、出血の危険が高い血中濃度になること、かつ効力不足で再梗塞につながる恐れもあります。無理に「1日1回服用」にしたような雑な投与設計の薬と言わざるを得ず、利便性を理由にこの薬剤に期待しない方がいいでしょう。
(民医連新聞 第1645号 2017年6月5日)