この夏の暑い課題 「核兵器廃絶」「憲法守れ」ひとりひとりが踏み出そう ―42期 平和アクションプランとは
全日本民医連は、四二期「平和アクションプラン」を発表しました。アクションプランとは? 夏に向け、今年も各地で平和のとりくみが本格化するいま、みていきます。全日本民医連反核平和委員会・名嘉共道委員長と国民運動部・山本淑子次長に聞きました。(丸山いぶき記者)
アクションプランって?
民医連は創立当初から被爆者医療などにとりくみ、戦争に反対してきました。被爆六〇年の前年二〇〇四年、「命と健康を守る医療人として、憲法を守り、核兵器廃絶・被爆者支援に大いにとりくもう」と、全国に行動提起したのが最初の「平和アクションプラン」でした。
以後、全日本民医連の期ごと、二年に一度、民医連の平和活動の柱として、反核平和委員会で起案し、理事会で討議、承認して全国に提起しています。
反核平和委員は三〇~四〇代前半の職員が中心です。情勢のポイントを押さえつつ、自分の言葉で語れるか、現場の仲間に受け入れやすい表現か、議論して練り上げます。
41期のとりくみ振り返る
プランは情勢を反映し、四一期(二〇一四~一五年度)以降、戦争する国づくりとのたたかいを強め、安保条約や米軍基地について学ぶことを強調。戦争法廃案に向けた運動が、各地で活発にとりくまれました。また、二〇一五年のNPT(核拡散防止条約)再検討会議に向け「核兵器全面禁止アピール署名」にとりくみました。目標署名数は達成できませんでしたが、被爆七〇年の節目の年に、若い人を中心とした被爆体験の聞き取りなど、積極的なとりくみもできました。
毎回、各県連・法人でアクションプランを作ろう、と呼びかけています。四一期は、「作成」「これから作成」が合わせて六八%。作成していない県連でも、ピーチャリや平和学校、原水爆禁止世界大会に向けた企画などにとりくんでいます。それらの実践をアクションプランとして位置づけることが大事です。
42期はここがポイント
今期のプランは、憲法改悪が現実になりかねない情勢を受け、「三つの柱」の第一に憲法を学び活かすことを据えました。国会では改憲勢力が三分の二を占め、改憲発議が可能な状況ですが、国会での議席数と憲法についての国民の思いにはギャップがあります。多くの国民は憲法九条が果たす役割を評価し、どの世論調査でも「九条改正は必要ない」という回答が過半数を占めます。大事なことは、本紙号外「憲法Cafe」で大いに学び、私たちが「憲法改悪を許さない」世論をつくるひとりになること。
そこで、今回は、平和の問題を自分の問題と捉え主体的にとりくむこと、いまの運動が未来の平和につながると意識できるよう「行動テーマ」を決めました。
また、昨年から始まった「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名(ヒバクシャ国際署名)」にも力を入れたい。世界は核兵器廃絶に大きく動いています。六月の国連会議では、人類史上初めて核兵器が「違法」となるでしょう。そんな中、唯一の戦争被爆国・日本の政府は、三月の国連の核兵器禁止条約の実現を求める交渉会議で、「誠実に参加することは困難」と発言し、退席してしまいました。政府の姿勢を正すために、世論で包囲する必要があります。
民医連では、五年間で二五〇万筆を集める目標を掲げました。二〇二〇年九月末までの長いとりくみです。毎年五〇万筆をめざし、毎月の六・九行動のほか、六~九月を署名集中期間とし、毎年の国連総会に提出します。全日本民医連もこの夏の欠かせない中心課題としてとりくみます。
原発ゼロへのとりくみも重要です。原発事故から六年が経ち、事故などなかったかのように問題収束が図られようとしています。原発ゼロの運動、福島被災地視察・支援連帯行動、原発事故被害者や避難者への支援のとりくみをすすめましょう。
広がるとりくみ
全日本民医連の平和学校は、今年で六回目。日本の戦争の歴史や平和、憲法を集中的に学びます。
六~一一月、計三クール、「被害の歴史」「加害の歴史」「現在の戦争に向けた到達、政府の狙い」をトータルに学びます。学校教育では近現代史を学ぶ機会が少なく、参加者からは、初めて知る事実の多さに「もっと知りたい」との感想も。歴史を学ぶことは、未来を見るためにも大切です。
卒業生たちは、各地で県連の平和企画などに携わっています。全国の仲間と学んでとりくみが広がっています。
「学び」と「やりたい」から
盛りだくさんで、どれも重要な「平和アクションプラン」ですが、実践で大切にしてほしいことは、真実を学ぶ学習を基礎に運動をすすめることと、若い職員の「やりたい」思いを大切にすること。若手のみなさんは小さなことからでも、仲間とつながり、勇気を出して声をあげましょう。
42期平和アクションプラン骨子
行動テーマ:平和な未来を私たちでつくろう~学び、育ち、行動し、つながろう~
〈3つの柱〉
(1)平和憲法を学び、身近に引き寄せ、守り活かす大運動にとりくみ、戦争する国づくりをやめさせよう
(2)新たな米軍基地の建設、機能強化をゆるさず、日米安保の解消に向けて米軍基地の撤去運動にとりくもう
(3)原発ゼロ、核兵器廃絶に向けた取り組みを強化し、安心して住み続けられる平和な社会につなげよう
《全日本民医連で》
①憲法・平和のとりくみを強めよう
1)全日本民医連第6期平和学校を開催
2)平和活動交流集会を開催
3)憲法の明文改憲を許さず、9条を守る活動、9条の会のとりくみを盛り上げましょう
4)戦争体験、特に医療従事者の戦争体験を聞き取り、語り継ぎましょう
②戦争法の廃止に向けてとりくもう
1)平和をまもるために戦争法廃止にとりくもう
2)戦争法のもと、自衛隊の戦争できる軍備・機能の強化に反対する運動にとりくみます
③沖縄県民のたたかいに連帯し、日米安保の実態を学び、日本から全ての米軍基地撤去をめざそう
1)日米安保条約の学習を強めます
2)辺野古支援・連帯行動
3)オスプレイ撤去と自衛隊への配備に反対します
4)日本から全ての米軍基地の撤去を求める運動
④核兵器廃絶のとりくみを一層強めよう
1)原水禁世界大会を成功させ、被爆者の思いを胸に、核兵器廃絶のとりくみを強めましょう
2)ノーモア・ヒバクシャ訴訟の支援にとりくみましょう
3)新しく提起されたヒバクシャ国際署名にとりくみましょう
⑤原発ゼロ、原発事故被害者支援の活動を強めよう
⑥各地でのとりくみを「まねっこ」しよう、ホームページなどでの経験交流をすすめよう
《県連・法人・事業所で》
①県連・法人・事業所で平和アクションプランを作成しよう
②とりくみをひろげ、青年職員の主体的な行動と成長に期待した、援助を重視しよう
安倍政権はいよいよ危険「いま」行動を―
名嘉共道委員長
安倍政権は、いよいよ戦争する国づくりを加速させています。自衛隊を憲法に明記することを、自民党の改憲草案ではなく、安倍首相自ら具体的なスケジュールとともに宣言。防衛予算拡大、自衛隊の強化、北朝鮮問題を口実に、アメリカとともに戦争をする恐れもあります。戦争の一歩手前にきている事実をしっかり見ていく必要があります。
「平和アクションプラン」にある内容は、かなりのスピードで進んでいます。起きていることを学び、議論し、行動にしましょう。「プラン」をよく読み、実践しやすく広げやすいところから、「今」とにかく「何か」、行動してほしい。とくに、青年職員を巻き込み、次の担い手づくりと未来をつくるとりくみとして平和運動をすすめてほしいと考えています。
(民医連新聞 第1644号 2017年5月22日)