相談室日誌 連載426 病院と地域の連携で在宅復帰が叶った(山梨)
Aさんは六〇代の男性です。一〇年ほど前から、様々な病気に苦しんできました。数年前に透析を始め、脳梗塞後遺症で半身麻痺があります。子どもはいるが離婚歴があり、疎遠です。病気で仕事が続けられなくなって数年前に生活保護を申請。在宅スタッフのささえで現在までひとり暮らしを続けてきました。
今回は、胃潰瘍とシャントの閉塞で入院しました。入院前はベッドからトイレまでなんとか自力で移動し、ヘルパーが作った食事を冷蔵庫から出して食べることができていました。しかし、治療に時間がかかり、入院中にADLが低下しました。立位をとれなくなり、ポータブルトイレへの移乗にも介助が必要になりました。
回復期リハビリ病院の入院適用になる病名がAさんにはなく、透析しながらリハビリができる病院も限られ、転院先がありませんでした。本人は強く帰宅を望み、地域包括ケア病棟へ移り、リハビリしながら帰宅する方向で検討を始めました。
ワンルームの自宅を訪問して環境を確認し、ケアマネジャーと検討の結果、独居の支援と透析の送迎サービスを組むと、介護の限度額を超えると分かりました。希望に沿うのは難しい、との結論に一度は至りましたが、本人は住み慣れた自宅での生活を強く希望。使えるサービスが十分でなく、リスクも説明した上で、帰宅準備することに。当初は思うようにならない身体へのいらだちや現状否認もあり「帰れば今まで通りできるから大丈夫」と主張した本人でしたが、話し合いを重ねる中、状態を自覚し、それからリハビリにも意欲的にとりくみました。入院前のADLまでは回復できませんでしたが、自宅退院が実現しました。
制度上、回復期リハビリ病院に転院できなかったことや地域包括ケア病棟の期限、介護給付の限度額など、いくつもの障害でスタッフも悩んだ事例でしたが、本人の希望を中心に、病院と地域とで力をあわせることができました。
(民医連新聞 第1643号 2017年5月1日)
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