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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 男性介護者への支援 埼玉・医療生協 ふじみ野ケアセンター 男性介護者特有の課題に着目し、改善

 全国の要介護(要支援)認定者数は六三〇・五万人、このうち七割が女性です(厚労省)。夫や息子など男性が介護者になることも増え、男性介護者ならではの悩みが増えました。どう介入し、支援すれば良いか。第一三回看護・介護活動研究交流集会で医療生協ふじみ野ケアセンターの小山雅美さん(看護師)が行った報告を紹介します。

 介護者が男性の場合、看護指導やケア方法を伝えても、それまでの考え方、やり方をかたくなに変えない傾向があります。これは、女性の介護者と比べても目立ち、介入の難しさを感じるケースが少なくありません。
 「利用者さんのここを冷やして」と伝えると、氷をあてはしたものの、溶けて水浸しになったままだったり、「傷を毎日みて下さい」と話すと、傷の様子をただ見るだけで処置していなかったなどのケースが、実際にありました。
 多くの男性は、仕事を中心にし、合理性や効率性を重視した生活を送っています。事実や情報に基づいて客観的に話し、情報の伝達や交換に重きを置く「レポートトーク」になりがちです。
 こうした男性介護者の問題を解決するには、根拠となる知識や情報を視覚化し、介護方法を伝えることが効果的ではないかと考え、アプローチを検討しました。

女性介護者との違い

 同センターの訪問看護を利用する、男性介護者七人を対象に検討しました。期間は、二〇一五年八月末から約四カ月間。
 まずはスタッフでカンファレンスを行い、ケースごとに介護上の問題点を抽出しました。利用者の体調管理ができていない、皮膚トラブル、便秘、認知症が悪化、リハビリの遅れ、間違った移乗方法で介護者が腰痛を発症、介護者がデイサービス利用を承諾しないなど、様々な問題があがりました。
 それをもとに、一人ひとりに指導方法を考え計画を立てました。担当看護師はケースに応じて必要な資料やパンフレットを作成し、それを使って介護方法を説明。「実際の介護を見せてほしい」と要望した介護者もいました。
 特に大変だったのは“食事”にかかわる部分でした。「『体調に配慮した料理』とは、どんなメニューか」「『消化に良い食事』とはどういうものか?」など、女性の介護者からは出たことがない疑問も出ました。実物を写真で例示することで、理解してもらえました。
【指導した男性介護者の事例】
 六〇代。認知症の両親と同居し介護していました。しかし、認知症の理解不足のために関心が薄く、両親が発熱していても気づかないことがありました。
 そこで、体温表を作って壁に掲示。毎日計って記入してもらうようにしました。最初は「ヘルパーさんがやればいい」と非協力的でしたが、「身体に触れ、体調の変化に気づくことが目的なんです」と伝えると、納得して応じるようになりました。
 認知症の知識不足は、パンフレットを使って細かく症状を説明しました。すると介護者自らセミナーの情報を調べて受講するなど、積極的に学ぶようになりました。

見て理解すすむ

 三カ月後、対象者たちにアンケートを行い、個別指導の効果を検証。すると対象者全員の行動が改善し、それぞれの問題が解決できていました。「資料があると、方法を見返すことができて良かった」「とても分かりやすかった」と好評で、「資料は必要ない」という意見はありませんでした。
 視覚的なアプローチで情報伝達を行うと、客観的で明確に情報を受け取ることができ、理解しやすかったものと考えられます。介護を“仕事”と捉えがちな男性介護者には有効な介入方法でした。

*   *

 スタッフ全員がこの件にかかわったことで、困難に対処する力がつきました。意見交換の場でもアイデアが積極的に出るようになり、工夫して対応できています。
 在宅の利用者が安心して生活するためには、介護者がキーになります。積極的にかかわってもらえるよう、今後も性別に関係なく、ていねいな対応を心がけます。

(民医連新聞 第1641号 2017年4月3日)