宮城民医連 災害公営住宅調査が語ること 健康、くらしの不安浮上データは自治体にも共有
宮城民医連は、被災者の暮らしの実情を知り、今後の支援活動につないでゆこうと、今年度も訪問調査を行いました。今回は被災者が仮設住宅から公営住宅へ転居した後の初めての調査になりました。一〇〇〇を超える世帯を対象に、のべ一六三人の職員・共同組織一五人が災害公営住宅をまわりました。留守宅などに配ったアンケートの返送分もあわせ、五六三世帯から集まりました。分析した結果は一二月六日に公表。「人間の復興」にはまだ遠い現実が、その結果から見えてきました。
調査実施日は、震災から五年半を迎えた昨年九月一〇~一一日の二日間。県内三市三町の災害公営住宅一三カ所一〇三一軒を訪問し聞き取り調査、また東松島市の一六カ所六二三軒についてはアンケートと返信用封筒をポスティングして集約しました。調査項目は、年齢、世帯人数、震災前後の就労状況の変化、居住環境、不安に思うこと(複数回答)、経済状況、疾病の有無と受診状況などです。
宮城県の被災者は、ようやく劣悪なプレハブ住まいを脱し、災害公営住宅へと移りつつありますが、一方でそれは仮設住宅でささえあってきた人間関係の解体も意味します。阪神淡路大震災でも明らかになったように、この時期は孤独死などのリスクが高まります。
563件のデータから
一〇三一軒を訪問し、在宅四一四軒、三三一軒が調査に応じてくれました。後日郵送で戻った二三二枚のアンケートとあわせ五六三世帯分が集まりました。また、調査後、訪問時に留守だった被災者から電話相談も二件入りました。
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【特徴】年齢は、七〇代以上が四三%(二四四人)。
震災前、仕事が「あった」人が三〇一人、「なかった」は二一八人で、調査時点で仕事が「ある」が一五九人、「ない」は三六二人に増え、震災を境に構図が逆転していました。
家賃の支払いが「たいへん苦しい」「やや苦しい」合わせて四一%、「生活がたいへん苦しい」「やや苦しい」合わせては五一%でした。この傾向は仕事の有無で差が出ませんでした。ちなみに、家賃は減免されており、二万円未満(一万円未満は三二%)が過半数。これは徐々に上がり、一〇年後には公営住宅相当の家賃になります。
転居後の生活環境は「快適」が四一%で最多だった一方、一四%(八二人)が「悪化」と回答。理由に、日当たりや風通しの悪さ、音、振動、狭い、カビなど住宅自体の問題や、人付き合いが希薄、交通の便が悪いなどがあがりました。
不安の1位「健康」
生活上不安なこと(複数回答)の一位が「健康」で約半数、次いで「収入」「将来の家賃」でした(図1)。
持病のある人が七割。この層が通院できているかどうかを生活の負担感と、被災者医療費免除制度の適用状況の二点で分析すると、気になる傾向が―。
生活の苦しさを訴える層ほど通院していない割合が増え、被災者医療費免除の有無で通院にはっきりと差が出ました(図2、3)。あわせて、被災者医療免除制度について聞いた項目では、七四%が「復活してほしい」と回答しています。
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宮城民医連は、こうした調査結果を県議会議員へのレクチャーの形で発表。五会派(自民、共産、民進系、社民、無所属)の一五人が参加し、メディア各社の取材も入りました。
宮城県に対しては被災者医療費の免除対象者の拡大を含めた検討を行うべき、と指摘。同時に、家賃を始め生活支援の検討も求めました。さらに調査結果は、災害公営住宅住民や職員と共有すると同時に、各自治体にも伝え、力を合わせて、被災者が安心してくらせる地域づくりにとりくむ、と表明しています。(木下直子記者)
(民医連新聞 第1640号 2017年3月20日)