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民医連新聞

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憲法なう。 最終回スペシャル 憲法が国民に保障する自由及び権利は 国民の不断の努力によって

 二〇一三年九月二日発行号からスタートした本紙連載「憲法なう。」は今号で最終回です。最後は、明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)の黒澤いつき共同代表から、連載の振り返りと「日本国憲法を守ろう」という力強い呼びかけです。

3年半振り返り

 「憲法なう。」の連載が終わり、気付けば第一回の連載開始から三年半が経過していました。連載の提案を頂いた時は、私たち「明日の自由を守る若手弁護士の会」は「まず憲法を知ってみよう」と世の中に訴えかけ始めた頃で、こんなに長い期間連載の枠を頂けることはとても光栄でした。
 「あれもこれも伝えたい!」という“野望”を抑え、エッセンスを見極めてそぎ落とす作業は、執筆者の力が試される瞬間でもありました。また、専門家として知ったつもりでも、学術書を開くと、忘れていたことや新たな発見もあり、貴重な学びの機会でもありました。
 この世に生まれ落ちた誰もがかけがえのない大切な存在で、自分らしい人生を歩んでいける。すべてはこの「個人の尊重」からスタートしていることを念頭に読むと、小難しく見える憲法も、分かりやすく感じられたのではないでしょうか。

日本国憲法の危機

 しかしこの数年間、残念ながら日本国憲法は不当に壊されかねない深刻な事態に直面しています。
 二〇一四年七月、安倍内閣は突然、憲法九条の解釈を変えると宣言。同盟国の戦争に参加する「集団的自衛権の行使」は、「憲法九条の下でも許される」と言うのです。戦争放棄を宣言する九条が、なぜ戦争を許すなどと言えるのでしょうか。それを望む民意などどこにもなかったのに、政府与党はあらゆる批判を振り切り、まともな議論もせずに、多数決という「数の暴力」で集団的自衛権の行使を可能にする安保法制を成立させました。憲法に縛られているはずの権力が、堂々と憲法と真っ向から矛盾する法律を作り上げた…戦後民主主義の七〇年において、最も恥ずべき瞬間を忘れることはできません。
 昨年一一月には、この安保法制に基づき、自衛隊がPKO部隊として南スーダンに派遣されました。新任務「駆けつけ警護」自体が憲法に違反するという問題はもちろんのこと、派遣先の南スーダンでは血みどろの民族浄化が収まらないことが国連で報告されており、派遣自体がPKO参加五原則や憲法九条に違反することが、連日、国会で追及されました。
 憲法二四条を変えようとする動きも強く警戒しなければなりません。家制度を廃止し、すべての女性を男性と対等な存在として解放したのが二四条です。ところが、自民党が示す改憲草案では、冒頭に「社会の基礎的単位は家族であり、家族は助け合わなければならない」という異質な条文が加わっています。「一人ひとりの自分らしい人生よりも家族が大事」という発想は家制度とまったく変わらず、その聞こえのいい文言が社会保障切り捨ての口実に使われかねません。同時に、法律レベルで二四条を骨抜きにしようという動きも強まっています。親子断絶防止法案や家庭教育支援法案など、大なり小なり複雑な問題を抱える現代の家族の多様化を無視して、「家族とはいいものである」「個人の幸せよりも“あるべき家族”の姿が大事」という価値観の押しつけは、許されないものです。
 どのようなテーマであれば野党も国民も改憲を支持するか? 自民党は常に探っています。そこで提案されているのが、「緊急事態条項」です。戒厳令とも、非常事態宣言とも言える、憲法を一時停止して権力を内閣、あるいは首相に集中させる制度です。自民党は災害対策を口実に改憲で新設しようとしていますが、権限を災害現場におろすならともかく、内閣に集中させるなどありえません。緊急事態条項は、非常時に自由な人権制約を許す、いわば憲法の自爆装置です。

国民の「努力」問われる

 安倍政権の勝手気ままな「壊憲」が止まらないのはなぜでしょう? それは、主権者である国民が政治に無関心だからです。私たちの日本国憲法は、七〇年前に自らの手で掴み取った「権力を縛る」最高法規。しかし、この憲法を守ることができるのか? 投票率の低さや世論調査の結果に不安にさせられます。主権者の覚悟があるのか―みんなが自らに問いかけながら、自分なりの“不断の努力”を編めれば、必ず豊かな社会が待っているはずです。


筆者一覧

黒澤いつき
黒澤瑞希 
髙木士郎 
川上麻里江

(民医連新聞 第1640号 2017年3月20日)