フォーカス 私たちの実践 入院患者に口腔検査 庄内医療生協協立歯科クリニック 口の健康の視点 入院時に歯科介入 口腔ケアの重要性、認知広がる
「高齢者や有病者には、口腔ケアをはじめとする口腔内環境の整備が極めて重要」と山形・協立歯科クリニックの歯科衛生士、佐藤美香さんは語ります。医科歯科の連携のとりくみを紹介するシリーズ二回目は第一二回学術・運動交流集会での佐藤さんの報告を紹介します。同クリニックは隣接する鶴岡協立病院に入院する患者への無料口腔検査を始めました。その結果、通院困難者の口腔内環境が向上するだけでなく、病院職員の口腔ケアに対する意識も変わりました。往診件数も倍増しました。
「通院困難な患者の口腔内環境の改善を」とクリニックが入院時の口腔検査を開始したのは二〇一〇年から。高齢者の入院が約八割を占める鶴岡協立病院では、早期から入院患者の口腔環境の向上をめざすことで気道感染の減少や経口摂取率・喫食率の増加、在院日数短縮につなげています。
■歯科介入までの流れ
まず、一週間以上入院する患者を対象に、外来看護師が入院案内パンフレットに同封した口腔検査の説明をします。検査の同意書を提出した患者の病室をクリニックが訪れ、歯科医師が口腔検査、歯科衛生士が口腔ケア用品のチェックを行います。用具を統一することで職員は口腔ケアの手技が統一され効率的に行えます。家族には退院後もケアを継続してもらうことを目的に、口腔ケア用品の購入もすすめます。
口腔検査をすると、義歯が必要だが義歯がない・義歯不適合や、通院困難なために口腔崩壊状態となっている人が多くいます(図1)。歯科治療が必要と診断され、主治医から「頼診書」が出ると、歯科治療を始めます。検査をした患者の七割が、歯科介入につながっています。
■改善と学習
とりくみ開始以降、二〇一二年に、口腔検査数と歯科介入数が当初から下降傾向になり、改善を行いました。
病棟の看護部門には、検査を受けるよう声掛けの徹底をお願いしました。病棟事務には、希望しない患者、同意書を出さない患者に再度声掛けをすることや、希望者についても、主治医の頼診書や患者情報の準備を早めに行うよう依頼。また、同意書や検査用紙を簡素化したり、口腔ケア用品を院内売店でも取り扱うなど、患者側の視点での配慮も行いました。
さらに、職員学習も実施。ケアマネジャーは、通院困難な患者さんの掘り起こし、仲介役となれるように、歯科の知識を学習しました。リハビリ技師は、リハビリと口腔・嚥下との関係性などを学習しました。
■結果から
二〇一五年は検査数七六四件、歯科介入数五三五件と、二〇一〇年の開始時から倍増しました(図2)。入院患者の熱発や肺炎発症率も減少し、病棟内に漂っていた口臭も改善しました。
病院で職員の口腔ケアに対する意識も変化し、一人の患者に多職種が関わるようになり、ケアの充実にもつながっています。また、「退院後、自宅でもしてもらいたい」と、歯科衛生士による在宅での口腔ケアと訓練の要望も増えました。
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これらのとりくみによって、患者、職員ともに歯科の有用性は認知されてきましたが、患者側の知識はまだ低いのが現状です。口腔ケアに関する講話や、法人広報誌への寄稿、他診療所も含めたポスター掲示などを続けていくことにしています。
また今後は、地域の開業医とも連携して歯科治療難民を掘り起こすことも考えています。
(民医連新聞 第1638号 2017年2月20日)