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民医連新聞

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21 男の介護 千代野さんとの奮闘記 [著・富田秀信] アクシデントは誰にでも

 皆さんはお連れ合いの職場、友人などの名前を何人言えますか? 子どもさんの友人の名前を何人言えますか? アクシデントが起これば、まず親戚の次にこれらの人々への連絡になるが、これが分からないとオロオロする。お連れ合いの最悪のアクシデントでは、喪中が済んで最初の年賀状。故人になったお連れ合いの、どの方に出すか、どんな関係だったかの悩み。その即効薬の一つは、夫婦共通の趣味。共通の趣味があれば、共通の友人がいるという事になり、アクシデントをてっとり早く伝えることができる。あいさつ抜きで本題にすぐに入れる。
 妻が倒れてから9年間は無事に過ごしていたが、7月、夕食後に一緒にテレビを見ていたら「苦しい」と体中汗だらけで横になり、私は急ぎ救急車を呼んだ。心不全で2カ月間入院した。退院後からこの11年間というもの、風邪も引かず、というか、心臓疾患なので風邪が一番禁物で、細心の注意を払ってきた。毎日デイに行くが、ほぼ室内。運動不足になるので、夕方5時にデイから帰宅したら、春夏秋冬、極力目の前の東寺の周りを手をつないで散歩する。下半身の衰えも心配だった。
 食事も左党の私の酒のつまみばかりにならないようにした。それでも彼女は子どものようにニンジンは皿の隅に残していた。「ニンジン食べんとアカンやないか。昔、保育園で子どもたちに『ニンジン食べなさい』言ってたやんか」。妻「だっておいしくないもん」に終始。
 平日は6時過ぎには夕食を終え、7時半には就寝し、彼女が就寝して2時間後には起こしてトイレ、未明にもう一度トイレに起こす。私も就寝後4時間後くらいにトイレに起きるのでちょうど良い。そして翌朝7時半に起こし、8時訪問のヘルパーと見守りをチェンジする。週末はほぼ1日ぐっすり寝ている。つまり前日夜7時半から翌日夕方まで、何回かトイレに起こしつつ、のべ18時間くらいだろうか。健常者には分からない、障害者の毎日の疲れがそれほど溜まっているのだろう。


とみた・ひでのぶ…96年4月に倒れた妻・千代野さんの介護と仕事の両立を20年間続けている。神戸の国際ツーリストビューロー勤務

(民医連新聞 第1638号 2017年2月20日)