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民医連新聞

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相談室日誌 連載420 「難民」の健康権保障に関わって(茨城)

 Aさんは五〇代のパキスタン人男性です。母国で反政府勢力派の中枢におり、迫害を逃れ、約三〇年前、一人で来日し難民申請しました。東京で二十数年働いた後、友人を頼って水戸市へ。当院を初診したのは三年前で、未治療の糖尿病は合併症になるほど悪化していました。しかしAさんは初診から数日後に、東日本入国管理センター(同県牛久市)に収監されました。センターで毎日のように受診を要請しましたが、三カ月近く無視されました。ようやく協力病院を受診した時も、手錠と腰縄で犯罪者のように院内を歩かされました。
 一年後、難民支援協会の支援で仮放免され、当院での治療が再開しましたが、友人の収入に頼る生活で医療費の捻出は困難でした。検査を拒否し、薬局では処方量を減らすよう薬剤師に頼み、食事は粗末でした。経済基盤の安定なしに回復は望めないため、生活保護申請へ。
 在留資格がないことを理由に退けられることも十分考えられたので、難民支援協会に協力を求め、請願書・診断書つきで申請すると、福祉事務所は県と協議し「人道的配慮」から受理。しかし、国の指導で廃止される可能性を付言され、「在留特別許可」取得を目指して支援協会と支援を続けました。重要なのは在留を希望する特別な事情です。治療継続が不可欠だと訴える署名を職員も協力して短期に一〇〇筆超を集め、入国管理局に提出。支援協会も驚くほど早期に特別許可が出ました。Aさんの三〇年余の緊張が少し和らいだ瞬間でした。
 Aさんは昨夏、他院で循環器疾患を診断されました。手術の可能性があるが、それには家族が日本に来て同意書提出が必要だと説明されました。家族は自爆テロ多発地区に隣接した町に住んでいます。就労も教育も成り立たず、テロに遭う危険、金銭目的の誘拐など、貧困と死の恐怖にさらされています。そんな中の渡航がどれほど困難を極めるか想像に難くありません。
 健康を阻害する因子には宗教問題や民族抗争、査証(ビザ)協定が締結されない国交問題があり、一人の患者さんの健康権保障の支援は、国際的な人権保障に関わると実感しています。

(民医連新聞 第1636号 2017年1月23日)