19 男の介護 千代野さんとの奮闘記 [著・冨田秀信] 男性介護
「女性が介護してもニュースにならないのに、男性が介護したらなぜニュースになるの?」というごもっともな声が女性からあがる。これは介護のみならず、子育てにも言える。
この国では長く、「子育てや介護は女性の仕事」と片付けられてきた。これは、「男は仕事」、「女は家庭」という封建的な区分に由来するが、高度経済成長期を迎え、女性の社会進出、家族構成の変化などで、この区分が崩壊しつつもなお、男性は家事や子育てを女性に任せ…というより、実態は押し付けて、「仕事人間」という隠れ蓑をかぶっていた。しかし家庭の経済状況は、その隠れ蓑の収入だけでは賄いきれなくなる。となると女性も働かざるを得なくなる。ならば、家事、子育て、介護も男性が分担せざるをえなくなるのは、火を見るより明らかだ。
女性は、それでもその苦労を地域や職場で声に出し、しなやかに生きるが、悲しいかな男性はそうはできない。「男のくせに、めめしい事言うな」と職場から言われればそれで終わり。解決は簡単な方へ流れる。つまり職場で声を出せない分、妻をはじめ自分以外の家族に強いる介護スタイルだ。そうなると家族や親戚に亀裂が生じてくる。
社会資源の活用に奔走するには少し困難が伴う。そしてそれでも介護の苦しみは自分で抱えたままになる。一番困難で勇気のある行動は、正々堂々と職場で家族介護の実態を語り、理解を求めること。仕事に対する熱情の一部を、介護の苦労を理解してもらう努力に費やしたらどうか。
1960年代、女性が社会進出する保障として「ポストの数ほど保育所を」との壮大な子育て運動を行ったが、男性は学ぶべきだと思う。
いまや男性も介護から逃れられない。介護しながら働き続けられるように、職場で介護休暇や時短などの要望をあげようではないか。介護に全く無関係の家族はなく、共感者は多いはず。男女問わず、この国から介護離職をなくそうではないか!
とみた・ひでのぶ…96年4月に倒れた妻・千代野さんの介護と仕事の両立を20年間続けている。神戸の国際ツーリストビューロー勤務
(民医連新聞 第1636号 2017年1月23日)
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