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民医連新聞

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ヘルパーは在宅生活の要 徹底した調理で健康に 香川・ヘルパーステーションみき

 ヘルパーの支援が利用者の健康維持、改善に大きく貢献しています。昨年の第一三回看護・介護活動交流集会で、香川・ヘルパーステーションみきが利用者の重い糖尿病を調理で改善した事例を報告しました。「薬でもここまで改善しない」と医師を驚かせた実践。ヘルパーの専門性が光ります。生活援助を切り捨てる介護保険の改悪政策への反論でもあります。(土屋結記者)

「入院しなくなった」

 「ヘルパーさんがいなければ、生活できません」。八〇代のAさんが取材に応じてくれました。JR高松駅から車で一時間ほどの山間地でひとり暮らしをする男性です。高血圧や心不全があり、胸水が溜まっては入退院を繰り返していました。
 ヘルパーが入り始めたのは二年前。月~土曜、毎日訪問があります。利用時間は日によって違いますが、一時間四五分ほどで入浴や服薬管理、調理の支援をします。
 Aさんの食事には特別な配慮が必要です。浮腫のため一日の塩分が六g、水分は一リットルに制限されているのです。塩分は厳密に計測し、水分も調理に使いすぎないよう工夫します。献立は、訪問当日、冷蔵庫にある食材を確認し、その場で考えます。栄養や彩りだけでなく、その日の体調も考慮して三食分作ります。
 「ヘルパーさんが来てくれるようになって入院しなくなった」とAさん。訪問のたびに体重をチェックし、五〇〇gでも変化があれば訪問看護や病院にヘルパーが連絡するため、大きく体調を崩すことが減りました。「制限を守りつつ好みに合わせてくれる。話し相手もしてくれ、笑うことが増えました。感謝しています」とAさんは語りました。

医師も驚く改善

 看介研で報告したのは、糖尿病の利用者の事例。HbA1cが一〇・五%とインスリン注射が必要な状態でしたが、調理支援開始から九カ月で六・五%に改善しました。これなら注射は不要です。
 決め手は、食生活が大きく変わったこと。「調理で直接介入するといっても、かなり大変でした」と同ステーションの夛田(ただ)真佐代所長は言います。食材を用意するのは本人やその家族。どんな食材が必要か、ヘルパーたちが根気強く伝えました。
 ヘルパーよりも先に訪問看護師が関わりましたが、食生活は改善できずにいました。「生活習慣を変えるのは大変。それを変えたヘルパーさんはやはり『プロ』です」と、訪問看護ステーションみきの山下光代所長は語りました。
 この報告を聞いて、生協みき診療所の田中眞治所長は驚きました。薬では改善できないほどの数値で、「外来の糖尿病患者さん全員にオススメしたいほど」と。
 ヘルパーステーションみきが新しく訪問を始める際は必ずアセスメントをします。病気や体調管理は医師や訪問看護に、調理は管理栄養士にアドバイスを受けます。
 訪問を始めれば、そのつどサービスや食事内容、体重などを連携ノートに記入します。ヘルパー間、他の支援スタッフや家族とスムーズに連携できます。

時間が足りない

 悩みもあります。これほど多くの仕事をするには、制度が定める時間では足りません。「私たちは利用者さんの全てを見ます。信頼されるほど、何も隠さず話してくれる。親身に聞ける立場にあるのに、時間がない」と、ヘルパーの花本直美さんは話しました。
 ヘルパーの業務には、「身体介護」と「生活援助」があります。夛田さんは、「利用者をささえる上でどちらも重要。優劣はつきません」と、生活援助を切り捨てる政策の誤りを指摘しました。
 田中医師は、別の視点でも生活援助の重要性を捉えています。「ヘルパーが調理に関わり、薬がいらないほど病気が良くなった。生活援助は医療費削減につながるのではないか」。
 在宅サービスの中でも、最も利用者に密着し生活まるごとをささえるヘルパー。「こうした実践を行政にも伝え、重要性を訴えたい」と、夛田所長は語りました。

(民医連新聞 第1635号 2017年1月2日)