知る見る “安倍社会保障解体”(3)相次ぐ医療費負担増 「かかりつけ医」以外の受診に負担上乗せ市販品類似医薬品は保険から外す
安倍政権がすすめる「社会保障の解体」の内容を読み解く連載。三回目は、かかりつけ医以外を受診する際の「定額負担」と、市販品類似医薬品の保険外し、です。
安倍政権が昨年末に閣議決定した「改革工程表」では、「かかりつけ医」以外を受診した場合の定額負担や「市販品類似医薬品」を保険から外すことは、来年一月からの通常国会で法案提出を予定していました。
しかし、反対や慎重を求める意見が相次ぎ、一一月三〇日の社会保障審議会医療保険部会で厚労省が示した医療費見直しのとりまとめ案では、「引き続き検討」とされました。
■「7割給付」の原則崩れる
「かかりつけ医」以外の定額負担とは、通常の窓口負担に加えて一回一〇〇円~数百円の定額を徴収する、というもの。例えば「定額」が一回五〇〇円に定められると、医療費が五〇〇〇円の場合、自己負担三割分の一五〇〇円に定額負担五〇〇円が加えられ、患者には二〇〇〇円が請求されます。患者負担は医療費全体の四割に。
これまでも同様の制度の導入が狙われ、関係機関や国民の反対で断念させています。提案のたびに「医療費適正化のため」「高額療養費の財源」などと、導入理由も定まりません。
今回の理由は「かかりつけ医の普及」ですが、部会でも「方策として外来受診時の定額負担導入が適当なのか。患者の負担だけ増やして経済的な誘導を図る施策には賛成しかねる」(日本看護協会)、「かかりつけ医に絡んでの定額負担は意味が違う」(日本歯科医師会)などと相次いで疑問が出されました。
「家庭医」として診療しているあびこ診療所(東京)の星野啓一所長は、「すべての問題をワンストップで『受け付ける』のが診療所の役割だと私は理解しています。しかし、医師皆がこうした考え方ではなく、臓器別の『かかりつけ医』があってしかるべきと考える医師も多数います。『かかりつけ医』の言葉の定義が不明確なので議論もかみ合わない」と指摘します。
健康保険法の附則には「将来にわたって七割の給付(患者負担は三割)を維持する」と明記されています。これは〇二年に現役世代の窓口負担を二割から三割に引き上げた際の確認です。日本医師会は、「法律上約束したものを、特別にとるのは間違い」(一〇月二六日の社会保障審議会医療保険部会で)、「日本の医療の特徴である外来のアクセスの良さを阻害し、受診抑制が働く懸念もある」(横倉義武会長)と指摘しています。
■湿布、風邪薬など保険外に
市販品類似医薬品の保険外しは、医療費削減をめざす政府が何度も提案してきたものです。一二年度の診療報酬改定では、「栄養補給目的」でのビタミン薬は保険外とし、医療費ベースで約一六〇億円を削減したとされています。
前出の星野医師は、「社会人が午前九時の診療開始を待って風邪薬をもらうことは非効率ではあると思う」と言いますが、「医療保険の処方薬ではカバーされている副作用が起きた際の補償、きちんとした服用を知らせる手立てが確立されているのか」と問います。
医療費削減を一番の目的とした保険外しはあってはなりません。
(丸山聡子記者)
(民医連新聞 第1634号 2016年12月19日)