リポート 韓国はいま市民革命のなか 禹錫均(ウ・ソッキュン)韓国保健医療団体連合政策委員長
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が12月9日、国会で可決された弾劾訴追案により職務停止されました。政権をささえる与党からも弾劾に賛成する造反議員が大量に出ました。追い込んだのは国民です。不正発覚後、首都・ソウルで始まった土曜の抗議集会は地方にも波及し、12月3日には全国で230万人超の規模に。幅広い分野の人々が「朴槿恵政権退陣非常国民行動」を構成し、運動の中心的役割を果たしています。このメンバーで韓国保険医療団体連合政策委員長の禹錫均(ウ・ソッキュン)医師の寄稿です。
■人口の4%が集会に
一〇月二九日、初めての集会は三万人だった。翌週三〇万人。さらにその翌週は一〇〇万人。しかし、これで終わりではなかった。一一月二六日にはソウルで一五〇万人、全国各地で一九〇万人が集まった。これは韓国の人口の四%にあたる数だ。
* *
韓国人が怒ったのは、国民に選ばれてもいない人物が国家権力を私物化していたことを知ったからだ。崔順実(チェ・ソンシル)被告が朴槿恵大統領の四〇年に及ぶ側近で「影の実権者」だった事実と、彼女の娘が名門・梨花(イファ)女子大学に特例入学し、出席もせずに単位を取っていたことが明らかになり、市民は驚愕した。
最初はハンギョレ新聞、JTBC放送などが不正を暴いた。崔順実が国政に深く関与した事実が明らかになると、市民が広場に集まり、メディアが競って取材し、「崔順実ゲート」は「朴槿恵ゲート」になった。大統領が財閥から直接、数百億ウォンを受け取った事実も表沙汰になった。
■市民のパワー
人々が集まる広場では最初から「朴政権退陣」が主なスローガンだった。当初は「これが国なのか」というスローガンが人気だったが、いまは「朴槿恵を刑務所に」が一番人気だ。一〇代、二〇代が生み出す才気走った風刺もあふれている。
慶尚(キョンサン)北道、慶尚南道の嶺南地域、六〇代以上(編集部注:保守支持が極めて強い層を指す)までもが政権への支持をやめた。大統領が謝罪したにもかかわらず、支持率は四%。市民の声は頑強だ。大統領がさらに条件付きの辞任を発表しても、市民は「即時退陣」を求めた。
大統領の弾劾に反対した与党セヌリ党の国会議員の携帯電話は、市民からの抗議メッセージでパンクした。また弾劾をためらっていた野党の国民の党(保守)も、市民のおびただしい抗議にさらされた。「国会がダメなら、市民が直接政権を退陣させよう」という勢いだ。
■要求は拡大する
要求も拡大している。民主主義の問題から「財閥も共犯だ」という大企業への抗議。THAAD(米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル」)配備や韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)など、北東アジアの平和に関する要求もある。
さらに今回の事態で表面化した「朴槿恵と一%特権医療」※と、朴槿恵が財閥との取り引きで導入した「医療商業化法」と規制緩和への抗議の声も拡大している。
デモの中心的役割を果たしている私たち「朴槿恵政権退陣非常国民行動」は、一九八七年に市民が軍事独裁政権を倒した「六月抗争」後の、もう一度の歴史的な機会が来たと見ている。
いま韓国で、市民革命が始まった。
翻訳‥ファン・チャヘ(黄慈恵)
※一%特権医療…一連の疑惑追及の中で、二〇一四年のセウォル号沈没事故発生直後から大統領の動静が不明だった「空白の七時間」に、美容医療を受けていた疑惑が浮上。韓国ではVIP医療が行われている
(民医連新聞 第1634号 2016年12月19日)
- 記事関連ワード
- 平和