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民医連新聞

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社会と健康 その関係に目をこらす(7) 虫歯が治せない ―小学生1万2566人 大阪府歯科保険医協会「学校歯科治療調査」が語ること

 「歯科検診で『受診が必要』とされた小学生のほぼ半数が受診せず―」。こんなニュースが今年話題になりました。大阪の歯科医師でつくる大阪府歯科保険医協会が発表した2015年学校歯科治療調査です。口の健康に経済背景が深く関わることは、海外の調査をはじめ、民医連の歯科がこれまで2度にわたってまとめた『歯科酷書』でも知られる事実です。調査は、視点を子どもたちに絞り、実態をつきつけました。(木下直子記者)

■調査概要

 大阪府内のすべての公立小・中・高等学校にアンケートを送付し、小学校の一九・一%(一〇〇六校のうち一九二校)、中学校の一九・〇%(四六三校のうち八八校)、高校の二六・二%(一四九校のうち三九校)が回答しました。

*   *

 設問には年ごとでアレンジはありますが「学校歯科検診の受診人数」「『要受診』の人数」「『要受診』の子が受診したかどうか」の三項目は開始時から継続して聞いています。学校別の結果は次の通りになりました()。
小学校…二〇一四年に学校歯科検診を受けた七万三一三一人のうち、受診が必要とされたのは二万四九二四人。ところがこの五〇・四%にあたる一万二五六六人が歯科を受診していませんでした。
中学校…同「要受診」一万一八七六人のうち、受診した生徒は三六八七人で三一%でした。
高等学校…同「要受診」九六五五人のうち、受診した生徒は一二六七人、わずか一三・一%でした。
 小▽中▽高と、学校が上級になるに従い、「要受診」とされても受診しない割合は増加傾向です。

 図

■口腔崩壊「いる」半数

 「口腔内が崩壊状態とみられる児童・生徒に出会ったことがありますか」という設問も。「いた」と答えたのは、小学校で四六・四%、中学校で三五・二%、高校で五三・八%()。なお「口腔崩壊」は、虫歯が一〇本以上ある、歯の根しか残っていない未処置歯が何本もあるなど、咀嚼(そしゃく)に障害があるような状態―としました。
 この調査にあたる同協会の政策部事務局・山本正剛さんは「虫歯は自然治癒はしませんから、治療できなければ口腔崩壊状態にまでいきついてしまう子が出てもおかしくありません」と話します。
 現在、山本さんたちは二〇一六年の調査を集計中ですが、今度は私立学校にも協力を呼びかけ。調査対象を大阪府内のすべての小中・高等学校まで拡大しました。なお、この最新調査では口腔崩壊の子どもの状況をより具体的に知るために、設問を「何人居るか?」に変えました。一二月二日時点で公立小学校だけで二五七人という数が浮上。これを元に推計すると大阪で二七〇〇人を超える口腔崩壊児童・生徒がいることになります。

表

■「まず治療費を」と学校

 多くの養護教諭が、未受診や口腔崩壊状態になった子どもたちの背景には家庭の貧困があることを指摘しました。ひとり親家庭、生活保護世帯、洋服が汚れたまま、入浴していない、など、アンケートに記された事例からも実態がうかがえます。これはこれまでの調査でも同じ傾向です。
 「子どもたちの健康を守るため、行政に望むこと」の設問には「まず治療費をなんとかしてほしい」の回答が多数。大阪では、全ての市町村で一回五〇〇円の窓口負担があります。「せめて子どもの医療費は無料に」というのが切実な声です。

■健全な成長も阻む

 調査は二〇一五年で四回目になりました。発端は、二〇一一年に関西ローカル局が放送した、歯科に行けない子どもと経済格差を考察した番組。協会も参加している大阪社会保障推進協議会(社保協)で「大阪の子どもの口の中はどうなっているだろう」と議論に。そして翌一二年に調査開始。初回は公立小学校だけでした(表)。
 「満足に噛むことすら出来ず、まともに食事もできない子どもたちが健全に成長することは非常に困難です。一刻も早く子どもたちを口腔崩壊から守る対策を取る必要があります」同協会の矢部あづさ理事は、この調査を報告した『月刊保団連』(二〇一六年一〇月号)誌上でこう結んでいます。

表

(民医連新聞 第1634号 2016年12月19日)