拡大県連医療活動委員長会議開く いまこそ「医療・介護の新しい2つの柱」実践を
一一月五~六日、全日本民医連拡大県連医療活動委員長会議を東京で開催。四六県連から一六八人が参加しました。「『医療・介護活動の新しい2つの柱』の実践と推進する県連医活委員会の確立」をメーンテーマに、(1)県連医療活動委員会の課題・役割、(2)地域医療構想・地域包括ケア、(3)SDH、(4)HPHの学習・討論を深めました。馬渡耕史医療部部長の問題提起、二題の指定報告、民医連内外から三氏が講演を行いました。また一七グループに分かれてワークショップも行いました。なお、医療活動委員長会議は二〇〇五年以来の開催です。医療部部長の馬渡耕史副会長に、医療活動委員会とは何か、そもそもを聞きました。(田口大喜記者)
冒頭、藤末衛会長があいさつ。
「いま世界が向かおうとしている四つの課題は、高齢化、格差問題、医療費高騰の中での医療の営利市場化だ」と示しました。そして新しい民医連綱領の実践と、「活動とたたかいの軸を定めよう」と提起しました。
問題提起は馬渡部長が行いました。二〇一八年度は二〇二五年の医療介護制度改革に向けて集中改革を行う、と厚労省の位置づけがあること。各県連、法人には、医療介護ニーズに応え、医師確保や養成、経営改善を図るためにも「民医連らしさ」を鮮明にした「医療・介護の新しい二つの柱」の具体化、実践が求められること、を前置きに述べました。そして設立から今日までとりくまれてきた民医連の医療理念(図)と世界の健康権保障や到達を解説。「『新しい二つの柱』の実践は今また民医連の原点にかえる実践。民医連らしさを改めて共有すること」と語り、「可視化し、地域に合った民医連ブランドづくりを」と呼びかけました。
続けて補足報告を山本一視医師部長、山田智介護福祉部長が行いました。
山本部長は、「我々の医師集団形成はどのように行われるべきか」と題し、二つの柱を実践する医師集団づくりには、「まずは私たち自身の変化が必要」と語りました。
山田部長は、「民医連介護の課題と医療に求めること」と題して、多様なデータを参照しながら、地域包括ケア時代に突入しつつあるいま、自院の機能、状況に関する情報の積極的な発信を呼びかけ、「病院間の連携が不可欠。患者をサポートする地域のチームだという意識をもとう」と語りました。
医活委員会を運営している長野民医連と北関東甲信越地協が指定報告を行いました(別項)。
《指定報告》 県連、地協の医活委員会は―
長野、北関東甲信越から
長野県連からは、県連医療活動部長の佐野達夫さんが報告しました。県連医活委員会の活動内容の報告とその歴史を振り返りました。医活部は月に一度のテレビ会議を開催し、環境問題委員会、倫理委員会、県連学術運動交流集会などの活動を行います。今期の課題として、HPH、SDHの視点を取り入れ、介護福祉部、経営部と連携しながら、「場」をつくっていきたいと語りました。
山梨県連の遠藤隆事務局長は北関東甲信越地協医活担当者会議のとりくみを報告しました。
北関東甲信越地協の医活会議は二〇一三年の第一回会議で(1)医療の質向上(2)診療所CI(クリニカル・インディケーター)の具体化の目的を確認しました。年四回の会議を開催し、ニュース『ぐさにやな』(群馬、埼玉、新潟、山梨、長野の頭文字)で情報を発信しています。
二つの新しい柱にもとづく医療活動の課題の討議を位置づけ、例えば医療活動方針と医師養成方針を一体的にすすめる活動のとりくみ状況を確認することが今後の課題だ、と語りました。
地域包括ケア、健康格差、HPHを学習
佛教大学社会福祉学部教授の岡崎祐司さんが「地域医療構想・新専門医制度・地域包括ケアと民医連運動」と題して、安倍政権の医療制度改革の危険な本質を示し、運動の重要性を訴えました。
千葉大学予防医学センター教授の近藤克則さんは、「健康格差社会にどう立ち向かうか」と題し講演。自身が調査した大阪・西成区の現状を報告し、健康格差と社会的排除を説明しました。またその対策を、世界のとりくみを例に説明しました。
日本HPHネットワークコーディネーターの舟越光彦医師(福岡医療団理事長)は「超高齢社会と健康格差社会の中でのHPH活動と医師養成」と題し講演。二〇〇八年、千鳥橋病院がHPHに加入。患者、職員、地域のグループでHPH推進の活動を行った結果、法人全体にとりくみが広がった経過を報告しました。
ワークショップで活発な討議
今回の会議では、講演ごとにワークショップが行われました。「『新しい二つの柱』を実践するために県連医活委員会にはどのような役割・パワーが求められているか」がメーンテーマ。
発表では、「地域や職員にも分かりやすく見える化を」、「ポジショニング、指標を共有」、「積極的にSDHの視点を医師養成に」、「牽引する民医連の姿を発信しよう」などの意見が出ました。
増田剛副会長は「二つの柱を提起し、日常の医療・介護を実践する旗振り役は医活委員会」と語り、来年開催までの実践を期待し、閉会あいさつとしました。
第一の柱
貧困と格差、超高齢社会に立ち向かう無差別平等の医療・介護の実践
第二の柱
安全、倫理、共同のいとなみを軸とした総合的な医療・介護の質の向上
馬渡耕史医療部部長が解説
11年ぶりに開催 「医療活動 委員長会議」とは―
「民医連の医療活動」とは
普段みなさんが実践している、日本国憲法にもとづく「無差別・平等」を特徴とする医療のことです。無料低額診療事業や、室料差額をとらないこともそうです。
医療・介護の2つの柱とは
ひと言で「民医連らしさ」を表すものです。民医連らしい実践を事業所単位で続けていくには、個人だけでなく、組織として地域包括ケアやSDHなどへの理解を深める必要があります。また、いくら理念は正しかったとしても、質が伴っていないといけません。「無差別・平等」と、「医療・介護の質の向上」の2つはどちらが欠けても、前進にはつながりません。
医療活動委員会とは
その地域に求められている医療・介護は何か? 課題を議論し、政策化していく場です。全日本民医連が行う拡大県連医療活動委員長会議では、全国的な問題と課題を、各県連に置き換えて議論します。
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医療部の調査では二六県連で医療活動委員会を置いていることが分かりました。しかし、存在感が薄いのが現状です。「二つの柱の実践のため、県連はどうするべきか?」考える大事な場です。全日本民医連が会議を行うのは二〇〇五年以来ですが、「復活させる」ではなく、「新たに作る」という構えで臨みました。
(民医連新聞 第1633号 2016年12月5日)