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民医連新聞

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相談室日誌 連載419 患者の生活、重視して 障害者世帯の相談から(秋田)

 Aさんはてんかん発作で入院した六四歳の男性です。全介助レベルで発語なし。身障手帳五級です。労災年金受給中で現在は就労継続支援を受けています。母と兄の三人暮らしで、九〇歳を超えた母は介護保険未申請でした。
 それまでのAさんは作業をほぼ完璧にこなし、頼りにされ、よく笑う明るい人でしたが、母が足を痛めた頃から物忘れが激増、話しかけへの反応も鈍く、無表情になりました。
 障害福祉サービス担当者は、うつか認知症を疑い、兄に受診をすすめましたが、経済的理由で渋りました。家事や金銭管理は兄の担当で、ギャンブルで年金を使い尽くす事もあるようでした。母親への経済的虐待の疑いで、地域包括支援センターが介入した頃、母親とAさんが相次いで入院。母親は介護保険サービスを入れてすぐ退院できましたが、障害福祉担当から「あと一年で介護保険に移るなら、在宅サービスを利用する時点で介護保険を使えないか?」などの提案があり、なかなかすすみませんでした。
 検査は特に異常なし。看護師やSWの声かけにひと言しか発語しなかったのが、少し話すようになり、毎日のあいさつで少し笑うようにも。自力でトイレに行けるほど回復しましたが、担当部門が決まらず、地域ケア会議が開かれました。Aさんが認知症かどうかを明確にしないと担当が決まらないというのが行政の説明です。そこで、入院中に市職員と障害福祉担当、SWと兄が付き添い、本人を精神科へ。認知症は否定され、障害福祉のプランが整うまで転院し、うつ状態を改善する方針が出ました。
 医療費などの支援も受け、Aさんは現在、自宅で生活中です。衛生面と金銭管理で今後も介入は必要ですが、ケアを受けてAさんも母親も閉鎖的で問題意識のない状態が改善しました。
 この事例では、年齢や病名で支援体制が変わることは、障害者には困惑でしかない、と思えました。また今回のようにサービス開始に時間がかかれば、生活が滞ってしまいます。一方、複合した問題を抱えたAさん一家に多面的なアプローチができたことや、地域で事例を共有し支援が続くことは良い結果でした。

(民医連新聞 第1633号 2016年12月5日)