第13回看護介護活動研究交流集会in新潟 全体会指定報告 生活、社会に光当て生きるをささえる実践
看護介護活動研究交流集会の全体会で報告された、四本の指定演題の概要を紹介します。
「13年の闘病をささえてきたもの 事例より健康の社会的決定要因を探求し『生きる』をささえた看護援助を振り返る」
高橋美緒さん(北海道・釧路協立病院、看護師)
一三年間、人工呼吸器を着け療養しているAさんを「健康の社会的決定要因」の視点から捉え、看護実践を振り返りました。Aさんは八〇代男性、慢性閉塞性肺疾患、うつ病、アルコール依存症の患者です。
Aさんは戦争体験者で、戦後、安定した仕事がなく貧困な時期がありました。慢性閉塞性肺疾患は喫煙が関係しますが、当時は健康被害の教育や情報が不足していたことも原因。アルコール依存やうつ病は、妻が亡くなった喪失感によるもの。「苦しいのは嫌だけど、長生きしたい」とのAさんの思いは、置かれた環境や人生経験が背景にありました。
本人と家族の意見が違い、看護展開に悩むこともありましたが、Aさんの利益を考えつつ「自分たちが大事にしている看護は何か」も考えながら、限られた環境の中で、Aさんらしく生きることを大切にしてきました。職場に患者や家族に寄り添う看護が根づき、受け継がれていることも確認できました。
「人として生きる権利の保障を求めて~介護サービスと障害サービス併用のたたかい~」
矢野美代子さん(福岡佐賀・福岡医療団介護支援センター、看護師)
六〇代男性、ALS(筋萎縮性側索硬化症)のBさん。認知機能は正常で、介護認定は要介護4でした。福岡市では、介護保険サービスと障がい福祉サービスの併用が認められるのは要介護5だけ。Bさんが生きるために必要なサービスは介護保険の給付上限を上回り自己負担になってしまいました。
福岡市に併用の審査請求をしましたが、「棄却」。同時に「ささえる会」を立ち上げて運動し、福岡県への再審査請求で併用が認められました。
厚労省は「一律で介護保険を優先しないように」と通達を出していますが、判断は自治体で異なり、格差が生まれています。当事者の声を聞いて寄り添いサポートするだけでなく、権利を守るためにたたかうことも必要だと学びました。
「生活習慣病を持った利用者と共に行う食生活改善により生活援助の大切さを明らかにする」
夛田(ただ)真佐代さん(香川・ヘルパーステーションみき、介護福祉士)
八〇代女性のCさんは、糖尿病患者でした。訪問に入った時HbA1cの値は八・〇%。服薬管理をしましたが、数値は一〇・五%に悪化。家族から在宅生活や体調の相談があり、週二回の「特段の配慮を持ってする調理」を始めました。それは、塩分量を正確に測って管理する調理です。栄養バランスも考え、利用者の希望に添った献立を考えました。
こうしてCさんの健康状態に合わせた調理をヘルパーが行うことで、わずか六カ月でHbA1cの数値が三%も減少しました。さらに三カ月後には六・五%に。一緒に献立を考えたことで、食への意欲や健康への関心も高まり、糖尿病の管理や血圧・体重の安定につながりました。
「若年妊娠の実態報告と支援についての一考察」
古田沢子さん(福岡佐賀・千鳥橋病院、助産師)
千鳥橋病院では、二〇一四年度に一〇代の出産数が急増。一〇~一五年度で出産した一二七四人のうち、一〇代の若年妊婦七〇人について、生活環境や家庭環境を調べ、支援のあり方を考えました。
若年妊婦の特徴は、低所得で経済的困窮、未婚が多い、一人で悩み受診が遅れる、感染症り患率が高いこと。家庭環境は、ひとり親世帯が半数以上で、異父きょうだいがいるなど複雑な家族関係、家族や本人に精神疾患や知的レベルの問題がある、乳児院や養護施設の入所経験などでした。
出産のため入院する期間は通常一週間程度のため、病院が継続して関わることは難しく、退院後の生活をささえるには行政や地域の支援機関の協力は必須です。また、性教育の充実はもちろん、地域ぐるみでささえることが必要です。
(民医連新聞 第1631号 2016年11月7日)