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民医連新聞

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「孤立、なくしたい」 組合員&病棟看護師 ひとり暮らし訪問14年 福井県医療生協 西藤・大安寺支部

 一〇月、共同組織拡大強化月間が始まりました。医療生協の組合員さんが地域でどんな役割を果たしているのか―。福井県医療生協西藤(にしふじ)・大安寺支部のとりくみを紹介します。同支部では、毎月、ひとり暮らしの組合員さんの訪問を、光陽生協病院の病棟看護師と一緒に続け、まる一四年になります。九月の訪問を取材しました。(田口大喜記者)

 西藤・大安寺地区の人口は六〇〇〇人。勤労者世帯と農村集落が混在し、ひとり暮らしの高齢者も多い地域です。
 支部では二〇〇二年から、毎月一回、ひとり暮らしの組合員さんの訪問を看護師とともに行っています。また、誕生月の組合員には「おめでとう」のメッセージを添えた歯ブラシのプレゼントもし、喜ばれています。
 「ひとりぼっちの組合員をなくしたい」と語るのは支部の宮川善信さん(88)。このとりくみを中心にすすめてきました。

■待たれる訪問、職員も学ぶ

 取材した九月一六日は、組合員四人と看護師一人で一八軒を訪問しました。「お元気ですか?」「お変わりないですか?」と声をかけると、「久しぶり」と出迎えが。近況を聞き、会話が弾みます。誕生月の組合員さんへのサプライズも好評。後ろ髪をひかれつつ、次の組合員宅へ向かいます。
 「困りごとはないですか?」と声をかけ、健康不安があったり、しばらく受診をしていないという人がいると看護師の岩田剛志さんが血圧を測ります。「体に力が入らない」と訴える人には、「最近転んだりしていないですか?」と様子を聞いたり、たばこを吸う人には注意喚起するなど、それぞれの状況や生活環境に沿って声をかけていました。岩田さんが「大丈夫ですよ」というと、安堵の表情。「自宅で体調管理をする高齢者は不安が多い。私から気づけるようにしています」と岩田さん。
 「同行する看護師にできることは血圧測定や声かけ程度ですが、暮らしぶりを見て分かることも多い」と光陽生協病院の看護主任・滝真奈美さんは語ります。若手職員の学びに役立っているだけでなく、看護学生のフィールドワークとしても好評です。「人と人、地域のつながりの大切さを学んでもらいたい」。また、地域に気を配りスタッフをささえてくれる組合員さんへの感謝も滝さんは語りました。

■地域に頼られる存在に

 支部からの毎月の訪問を楽しみに待つ組合員さんも増えています。「冬に、大雪で訪問できなかった月がありました。すると『もう訪問してもらえないのか?』という声が出たこともあります」と宮川さん。
 このとりくみが地域で医療生協の存在を示し、健康チェックなどの他のとりくみを利用する人も増えました。また相談も増え、道路の補修を自治体に要請したこともあります。組合員さんの状況をつかむだけでなく、地域との結びつきも強まっています。

■活動を続ける課題は―

 訪問で拾った声を通じて、支部では、一昨年から通院の送迎ボランティアも始めました。地区から生協病院までは二~四キロほどの距離。利用できる公共交通機関もありません。訪問で「生協病院を利用していますか?」と問うと「ちょっと遠い…」との答えが多かったのがきっかけです。現在、六人が利用しています。雨の日はとくに喜ばれるそう。事業所の利用促進にも一役買っています。

*   *

 医療生協の支部が地域になくてはならない存在になる一方、課題も。それは運営委員の平均年齢が七〇歳を超えたことです。「仲間づくり、後継者づくりが急務」と五十嵐信雄さん。「安心して住み続けられるまちづくり」を合言葉に、地域に根ざした活動の継続をめざしています。

(民医連新聞 第1629号 2016年10月3日)