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民医連新聞

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13 男の介護 千代野さんとの奮闘記 [著・冨田秀信] トイレ考

 バスや電車内で、優先座席が空いていれば健常者も座れば良い。その席が必要な障害者や妊婦、お年寄りなどが乗車してくればその席を譲れば良い。
 だが、街中の駅や施設の身障者トイレの場合はどうか? 最近は「多目的トイレ」などのシャレた名前がつき、それにつれて用途(利用対象者)も多彩になっているが、要は身障者が使うトイレのことだ。
 妻との外出でいちばんの心配はトイレ。ほぼ1時間に1回はトイレに連れていく、促す必要がある。妻が「お父さん、オシッコしたい」と言ったときには間に合わない事が多い。そんな時、見つけた身障者トイレが塞がっている…。「お母さん、がまんしぃや」と手を引き、早く空かないか焦って待っている。やがてドアが開き、相応の人(身障者やお年寄りなど)が出てくれば納得もしようが、それが例えば着替えに使った高校生であればどうか? 映画館やコンサートの休憩時間、女子トイレが満員の場合も同じようなことが起きる(余談ながら度胸のある健常女性は男性トイレを使ったりもするが…)。特に駅の身障者トイレの場合、コトは解決しないにしても、今後の啓蒙のつもりで駅員を呼ぶようにしている。
 私は、身障者トイレは身障者のために24時間空けていてほしいと思う。なぜなら、それが必要な身障者は、その時外で待つことができない。妻も失敗が多々あり、何度も悔しい思いをした。
 健常者が気付かないこんなささいな事も、何年と言い続けていると変化もあった。最近ある私鉄駅では、ドアに「このトイレは身障者の方優先です」とのひとことが標示されるように―。ささいなことが、ささやかな変化につながり、こうして人々の理解がすすむのだろう。


とみた・ひでのぶ…96年4月に倒れた妻・千代野さんの介護と仕事の両立を20年間続けている。神戸の国際ツーリストビューロー勤務。

(民医連新聞 第1629号 2016年10月3日)