フォーカス 私たちの実践 健診でのアルコール介入 岡山協立病院 健診時の介入で飲酒量の低減をはかる
岡山協立病院では、健診時の問診票で適量以上の飲酒をしている人に対し、アルコール簡易介入を行い、飲酒量を低減してもらうようとりくんでいます。保健師の片山蓉子さんが第一二回学術・運動交流集会で報告しました。
過度な飲酒で起こること
「節度ある適度な飲酒」は一日平均純アルコールにして、二〇g程度とされています。ビールなら約五〇〇ml、日本酒だと一合(一八〇ml)程度です。
適量の三倍の六〇gを週一回以上飲酒する人を、「多量飲酒者」と呼びます。日本には約一〇〇〇万人もいると見られています。また、アルコール依存症者は約一〇七万人と推定される一方、治療中の人は約四万人にしかならず、多くが治療につながっていません。
過度のアルコール摂取は、身体的・精神的な健康障害だけでなく、アルコール摂取によって引き起こされる社会問題(飲酒運転、暴力、虐待、自殺など)とも密接に関連しています。
対策は不十分
二〇一〇年にはWHOが「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を採択、日本も「第二次健康日本21」で飲酒量低減の目標を掲げました。また一四年六月にはアルコール健康障害対策基本法が施行。医療者に「健康診断及び保健指導において、アルコール健康障害の発見及び飲酒についての指導」や「アルコール健康障害の進行を防止するための節酒又は断酒の指導」を求めています。酒量低減への対策は喫緊の課題ですが、アルコール専門機関以外の一般病院や健診機関では、積極的な介入がすすんでいるとはいえません。
適量の2倍超の人に
当院では基本法施行後の一四年八月、健診受診者のうち、ドックや特定健診などの問診票でアルコール摂取が毎日四〇g以上の人を対象に保健師がアルコール簡易介入を始めました。開始から一五年四月までの九カ月間では健診受診者三九七五人のうち、「毎日飲む」と回答した人は約二割。男性では三〇%以上が、女性では六%が「適量以上」の飲酒をしていました。介入対象者は二一五人。介入できたのは四四人でした。
介入は健診日、問診票で飲酒量を確認し、本人の了解を得て一〇~三〇分程度の面接をします。
自身の飲酒問題に気づいていても、それを変えることができず悩んでいる人が多くいました。面談の際は、一方的な説得にならないよう、共感しながら、「本当は減らしたい」という本人の動機を引き出すよう意識しました。
適量や酒害についての知識がない人には、飲酒習慣スクリーニングテスト「AUDIT(オーディット)」を行い、現在の飲酒量、適量、検査データなどの情報を提供しました。
約一カ月後、介入した四四人のうち、二一人に飲酒状況を確認。飲酒量や頻度の状況から、減酒できた人は一五人(三四%)でした。
健診は減酒提案の機会
多量飲酒者がアルコールの相談機関に自ら出向くことはまれです。健診時は、健康についての意識が高まっています。介入によって自分の飲酒問題について考えてもらうことができ、減酒や専門病院への受診などの行動変容につながるきっかけにもなりました。地域住民の健康を守る予防活動として有効であると考えられます。
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私自身、以前はアルコールの介入に積極的になれず「ほどほどにしましょうね」程度の指導しかできてきませんでした。介入を始めたことで、もっと対象者と向き合えるようになりました。介入方法のレベルアップや、効率化など課題を検討しつつとりくみを続けていきたいと考えています。
(民医連新聞 第1626号 2016年8月15日)
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