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民医連新聞

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被ばく相談窓口をつくろう 民医連のセミナーから (10) 相談活動で注意すること

 昨年九月に開催した「被ばく相談員セミナー」で、被ばく問題委員の雪田慎二医師(精神科)が行った講演を連載しています。今回は、相談活動で注意することについてです。

セルフケアを尊重する

 まず、最初から「こころのケア」を意識し過ぎないことが重要です。被害者は決して心が弱いわけではなく、生活が脅かされているだけなのです。そういう状態の時には、まず生活相談をしっかりやる、家族・地域のつながりを戻す支援など、生活面での対応が大切です。
 援助の方法にも気をつけましょう。私たちは「何かしてあげなくては」と思いがちですが、実はセルフケアが大切です。運動や趣味、誰かとおしゃべりするなどのセルフケアが有効に働くよう支援しましょう。ただし、原発事故の避難者などの中には、セルフケアができなかったり制限されている人もいます。そこを補うことも必要です。
 セルフケアには不適切なものもあります。例えば「過度な飲酒」です。そこには介入しなければなりません。緊張感をほぐすための適切な工夫であれば、それを強化するような支援をしましょう。

反応には個人差がある

 ストレス反応には個人差があることもおさえておきましょう。連載七回目でストレスの図式を示しました。すぐに身体的な症状が出てしまう人がいる一方、がんばれてしまう人もいます。どちらにせよ、長期化すれば必ず症状は出ます。
 私の場合は口内炎で、ひどくなると仕事をなるべく断ろうと思い始めます。皆さんも「こんな症状が出たらストレスはこれくらい」と経験的に分かると思います。そうした目安を活用してストレスをコントロールするのも大切です。
 大きな災害や事故でも同様に反応には個人差があります。それを「強い・弱い」と判断するのは適切ではありません。症状を顕在化させた原因が問題であって、被害者自身の責任ではないのです。

異常事態に対する感情

 相談者は、大震災と原発事故という、人生を大きく揺るがす出来事を経験しています。そのような事態に直面したときに湧き出る感情も押さえておきましょう。
 まずは「不安」。例えば、がんの告知の場合には「治るのかしら」と思うでしょう。また、「がんになってしまった」と気持ちが沈む「抑うつ」もあります。これは理解しやすい感情です。一方で、「怒り」が出てくることがあります。不安や抑うつと比べ難しい問題と捉えられがちですが、理解することは可能で、大切な問題です。
 津波や原発事故に対して、「政府は何をやってるんだ」など、いろんな怒りが出ます。これは正常な反応です。目の前で起きている異常な事態の中で引き起こされる正常な気持ちの反応だと理解し、受け止めることが必要です。
 その際に注意することは、怒りをぶつけてしまった後です。「何であんな事で怒ってしまったのか」「相手は悪くないのに、申し訳ない」など、罪悪感に陥ってしまう人がいます。こうなってしまわないよう、相談を受ける私たちは配慮することが求められます。

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 次回、怒りへの対応を事例を交えて紹介します。

(民医連新聞 第1626号 2016年8月15日)