相談室日誌 連載414 非正規雇用問題を目の当たりにして思うこと(新潟)
Aさん(四〇代・男性)は自宅アパートで体調の異変を感じ、自ら救急車を呼びました。結果、回転性めまいと糖尿病で入院治療が必要と判断されました。会社に休みを申し出ましたが、「日雇いのため、解雇せざるをえない」という結果でした。
Aさんには身よりがありません。高校卒業後、清掃会社の正社員になりましたが、バブル崩壊の不況で解雇に。以後、派遣や日雇いのさまざまな仕事をしました。入院当初従事していたのは解体業で、交通費は自己負担、遠い現場が多く、収入はほとんど残らない状態でした。
数年前から糖尿病と高血圧を指摘され、治療はしていましたが、受診で仕事を休むと解雇されるかもしれないと、自己中断していました。
高額な入院費の支払いと今後の生活の不安で、Aさんは早期退院を求めました。しかし入院治療は必要です。そこで生活保護を申請、支給が決定し、安心して治療を受けることが出来、当面の生活の心配もなくなりました。
退院後も治療が必要だったため、通院治療を続けていくこととなりました。同時に就労支援を受けながら、仕事復帰することが目標になりました。「仕事をクビになると思い、今まで治療を受けずにいた。治療しながら仕事を探すことができて、本当に良かった」と、Aさんは退院時に安堵の表情で話しました。
ワーキング・プアという言葉をよく耳にします。日本では一般に「正社員として働いていても、ぎりぎりの生活さえ維持が困難、もしくは生活保護の水準にも満たない収入しか得られない就労者の社会層」を指します。ワーキング・プアは増加の一途です。経済低迷による人件費削減を理由に、企業が安価な労働力を活用してきたことが原因とされています。
同じようにワーキング・プアの問題がある隣国、韓国では、非正規社員の増加を規制する法案として「非正規保護法」という法律が成立しました。日本でも、問題の解決にむけて国を挙げて具体的に対策する必要があると思います。誰もが安心して働ける社会が実現することを切に願います。
(民医連新聞 第1626号 2016年8月15日)
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