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民医連新聞

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民医連と参議院選挙 “民主主義はとまらない” 藤末衛・全日本民医連会長に聞く

 参議院選挙が終わりました。民医連にとっては「戦争法(安保関連法制)を廃止して、いのちが大切にされる社会をつくるために、この選挙で変えよう!」と位置づけ、とりくんだ特別な政治戦でした。公示日には、全日本民医連会長が全ての都道府県連会長と連名でアピールを発表。この選挙結果をどう見るか、今後の課題は―。藤末衛・全日本民医連会長に聞きました。

(丸山聡子記者)

3年前と比較すると

 戦後初めて市民と野党(民進、共産、社民、生活)の共闘が実現し、選挙区では、全国三二の一人区全てで野党四党の統一候補が生まれ、一一選挙区で与党候補を制して当選する、という画期的な前進がありました。そして、三年前の参議院選挙と比べると、与党である自民党、公明党は七六議席から七〇議席と六議席減らし、野党四党は二七議席から四〇議席と一三議席増加。前回大幅に議席を減らした民主党(当時)は回復傾向、日本共産党も改選前より議席を倍増させました。一方、選挙中は意識的に改憲問題の争点化を避けた改憲勢力が衆参両院の三分の二を占めました。重大なこととして受け止めなければなりません。

国民に背を向けた政治

 安倍政権は二〇一二年末の発足以来、消費税八%への増税、特定秘密保護法の強行、自衛隊の海外派兵に道を開く集団的自衛権の行使容認の閣議決定、戦争法の強行、原発再稼働、TPP推進など、国民の願いに背を向けた政治をおしすすめてきました。こうした“暴走”に対して、市民が声をあげ、行動を始めました。そして、その動きは一つ一つの課題も超えて「安倍政権を変えるしかない」と、市民運動が野党を共闘させ選挙で政治を変える流れをつくりました。
 米軍基地新設問題でたたかっている沖縄と、原発事故被害に苦しむ福島で、それぞれ野党統一候補が現職大臣に勝利しました。与党が推進するTPPの影響を大きく受ける東北六県では野党が圧倒的な勝利を収めました。市民との共闘で争点が明確になれば野党は前進するとはっきりしました。
 野党共闘が「一+一=二」以上の効果を発揮しています。無党派層の六~八割が野党統一候補に投票したとの出口調査(「朝日」七月一一日付)も。「選挙の風景が変わってきた」、「共闘の前進が確実に政治を変える」と、私も感じました。
 民医連の仲間も、原発再稼働反対から始まった地域の市民運動の要となって奮闘し、これまでにない規模で日本国憲法の学習にとりくんできました。そのことが「選挙も自分のこと」という空気につながり、選挙にとりくんだエピソードもたくさん生まれました。
 「選挙へ行こう」という呼びかけも積極的に行われました。待合室で患者さんに選挙のミニ学習会を行った事業所も。スタンディングも各地でとりくみました。

選挙後の安倍政権

 安倍首相は参院選直前に消費税増税の再延期を決め、選挙中は「争点はアベノミクス」「憲法のどこを変えるのか集約していない。参院選で問いようがない」と繰り返しました。ところが開票結果が出るなり、「憲法改正は以前から申し上げている。前文から全てを含めて変えたい」と発言を変えています。
 自民党改憲草案は、九条を変え、国民の権利を抑制する中身です。市民と野党の対案は、現行の日本国憲法です。戦争法や平和の問題のみならず、医療や介護の現場から、日々の生活の中に生きる憲法を深く学び、「誰が何のために憲法を変えようとしているのか」をはっきりさせることです。たとえ国民投票が行われても、どのような宣伝がなされても過半数の国民が「現行憲法を守る」道を選ぶ―という確固とした陣地を築く運動を作る覚悟が必要です。

社会保障運動は総がかりで

 参院選後は社会保障の削減政策が目白押しです。各種審議会も再開していますが、医療では、七五歳以上の医療費窓口負担の原則二割化や自己負担上限の引き上げを具体化。療養病床は二〇一八年三月で廃止と決まっています。介護では、要介護1、2の人の生活援助、福祉用具貸与の「原則自己負担化」が打ち出されています。生活保護費のさらなる減額や、老後の命綱である年金の支給年齢先送りまで議論されています。
 今回の参院選を通じて、社会保障を「国民の生活保障」と広くとらえる視点が出てきました。いわば、「SDH」の視点と言ってもいいでしょう。医療・介護だけでなく、教育や雇用、保育、住居などが有権者の関心事に浮上し、全ての政党が取り上げました。戦争法など平和の課題とともに生活保障、暮らしの争点がアベノミクスでない選択肢として可視化され、受け皿ができれば、政治が変わることは確実です。
 民医連は提言「いのちの格差を是正する」を発表し(一四年)、消費税増税に頼らない、日本社会が生み出した富の再分配としての社会保障拡充の道を提案しています。憲法学習とともに、社会保障の課題を自分の課題として周りに語っていく。社会保障を守る総がかり行動の担い手そのものを広げていく、それを重視したいと思います。
 民主主義を守り生かす私たちの歩みは止まりません。市民と野党の運動は始まったばかりです。

グラフ

「選挙で政治変えよう」―仲間の活動

 主権者として投票に行き、政治を変えよう―。全日本民医連が掲げた「戦争法廃止」「平和憲法を守る」「権利としての社会保障の実現」に向け、各地で多彩な活動が行われました。

戦争行かず選挙に行こう

神奈川・川崎協同病院

 6月30日、ナイトピースセミナー第2弾「『戦争行かずに、選挙に行こう』~みんなで署名がんばったね! お疲れ様&達成職場表彰式」を開催しました。
 戦争法廃止2000万人署名のお疲れ様会だけでなく、選挙に向けてみんなで決意しあうようなとりくみを、と企画。26人が参加して大成功でした。
 職員の「選挙に行こう」メッセージを動画にして上映。全日本民医連の選挙チラシを読み合わせました。署名のとりくみの表彰式をした後は、参加者一人ひとりの思いを交流しました。若い職員が選挙への思いを一生懸命語りました。「がんばったことを評価してほしい」との要望から実現した表彰式は、「やりがいが生まれる」と好評でした。
 「若い人が『入職する前は選挙とか考えなかったけど、入職していろいろ聞く中で意識するようになった』と話していた。とりくみの大切さを感じた」との感想がありました。(長谷川貴子、事務)

「仮想投票」で選挙に関心

岩手民医連

 参議院選挙に向け、1人でも多くの職員に関心を持ち、投票に行ってもらおうと、「仮想投票」を行いました。6月27日から4日間、昼休みに「ノンアルBAR民医連」を開店。ジュースなどを飲みながら、高校生向けに作られたDVD「18歳の選挙権」を鑑賞しました。
 参加者数は183人。初の試みで「岩手民医連版/仮想投票」も実施。独自に作成した仮想の法案について職員が投票します。毎日開票し、結果を速報でお知らせ。投票率は45・2%。開票の結果、仮想の7法案のうち「自然食推進法」と「公営ギャンブル禁止法」の2法が可決しました。「仮想投票だが、法案とマニフェストを読んで自分の意思を表明するのが面白かった。今回初めて選挙に行くので興味を持てた」などの感想が寄せられました。(阿部彩子、事務)

(民医連新聞 第1625号 2016年8月1日)