相談室日誌 連載413 「大人の発達障害」の相談を通して(青森)
筆者が働く事業所は、障害者総合支援法に位置づけられる地域活動支援事業I型や、相談支援事業の委託、指定特定相談支援事業(計画相談)等を運営しています。ここ数年、大人の発達障害の相談が後を絶ちません。ほとんどの当事者が「普通に学校を卒業できたのになぜ?」という疑問を抱えています。大人の発達障害の増加が言われていますが、社会環境が複雑になり、暮らしにくくなり、症状が顕在化しやすくなったためとも言われています。
Aさんは、二〇代後半の発達障害の女性です。病院で「脳機能の障害」と説明されましたが、進学校を問題なく卒業できたのに、なぜそう言われなければならないのか? と納得していません。そして、障害は幼い頃に頭をぶつけたため、と考えようとしています。高校卒業後、就職しましたが、職場で注意されても、その理由が分からず辞める、ということを繰り返しました。二年前から自宅にひきこもっています。両親からの相談で、当センターで支援中です。
四〇代のBさん(男性)も、やはり職場でのコミュニケーションがうまくできず、ひきこもっていました。することもなく自宅にいて精神状態が悪化、受診がきっかけで発達障害と診断されました。当センターには病院から紹介されて通っていますが、なぜ自分が障害者と言われるのか、悩み続けています。
大人の発達障害と診断され、相談に来る人の多くは、ある程度守られた学校教育の中では、ほとんど無自覚で過ごしています。社会に出てから、社会性やコミュニケーション、イマジネーションの障害や、感覚過敏など、発達障害の特徴のために、社会生活をうまく送れなくなっていきます。経済優先で効率ばかり追う社会の中で、はじき出されているようにも感じます。
発達障害者支援法には、発達障害者が基本的人権を尊重されること、個人として尊厳にふさわしい日常生活・社会生活を営むこと、障害の有無によって分け隔てられず個性を尊重されることなどが規定されています。憲法改正の動きがある中、個々の基本的人権が守り抜かれることを、障害福祉の現場から切に願っています。
(民医連新聞 第1625号 2016年8月1日)