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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 ヘルパー対象に連続学習会東京・障がい福祉相談支援センター・パティオ 精神疾患の訪問介護 「困った」経験9割に応え

 「精神疾患・障がいのある人のケアについての連続学習会にとりくみます」と、埼玉県三郷市の障がい福祉相談支援センター・パティオ(アカシア会・東京民医連)の相談支援専門員・長島喜一さんが知らせてくれました。精神疾患や精神障害のある人への訪問介護は需要が増えていますが、同時に、ヘルパーたちは支援の難しさに直面しています。疾患の知識や接し方などを学びたいと思っても、なかなかそうした場がありません。連続学習会はこれらの悩みに応えようというものです。

事前に集めた声に基づいて

 学習内容は事前にパティオが精神疾患(障がい)の人の居宅介護(身体、家事、通院)を依頼したことのある三市一四事業所のヘルパーにアンケートを呼びかけ、悩みや要望から検討しました。
 回答した三〇人のうち、九三%が精神疾患・障がいの人のケア経験があり、そのうち八九%が「困った」と思う経験をしていました。問題を大別すると「精神の病気や病状」「介護」「サービス」など(下表)。一方、精神疾患の人の介護の研修や学習会に参加したことのない人は半数、理由の最多が「学習の必要性があったが機会がなかった」で約九割でした。
 多くのヘルパーが学ぶ機会を望んでいること、精神疾患の人への介護場面での問題は、ヘルパー個人の問題でなく、地域の介護問題として捉える必要がある、と長島さんたちは確認しました。
 五月に開始して六月まで全四回。開催日時は時間のないヘルパーが参加しやすい平日夜に設定。
 各回のテーマは下項の通り。約一時間の講義の後は、精神疾患当事者が自身の状況やヘルパーへの思いを語った「ボイスレター」を聴きます。続けて、受講者間の意見交換の時間もたっぷりとって全二時間。参加は無料です。

図

講演と交流、当事者も声寄せ

 第三回の学習会では、すこやか福祉会の介護事業部部長の漆原沙織さん(東京民医連)が「精神障がい者への訪問介護の実践を通しての学び」と題して語りました。
 漆原さんは、関わった患者の事例を通して、信頼を築くタイミングは「普段と違うことが起きた時」で、それを逃さないことが大切、と強調。また、生活維持以上のケアができなかったり、関係をつくれないまま終わるなど心残りな事例も振り返りました。
 高齢者介護にはケアマネジャーがつきチームで関われますが、精神疾患・障がいの場合、利用者と事業所の二者が基本になるため問題は事業所で抱え込みがちになります。漆原さんは「精神疾患・障がい者こそチームでささえる必要がある。色々な機関を巻き込みましょう」と、まとめました。
 この日声を寄せた当事者は六〇代の独居女性。約四〇年間「悪霊」に悩まされています。最近は体力が落ち、買い物支援や入浴介助が助かる、と語りました。
 交流の時間では、本人にしか見えない「悪霊」などの話題が出た場合、スタッフはどう答えているか? コミュニケーションが難しかったり、苦情の多い人への対応、事業所内の情報共有の方法など、実践的な話を交わしました。

***

 四回を通して、のべ八〇人超が受講しました。参加事業所は、訪問介護にとどまらず、訪問看護ステーションや病院、施設など八種一七事業所にのぼりました。
 「講義を聴くだけの一方通行でなく、意見交換を意識したので、地域の事業所同士が顔の見える関係をつくる足がかりにもなりました」と、長島さん。「事業所の連携は、精神疾患・障がいの利用者に特に欠かせません。今後もつながって学ぶ機会を持ちたい」。


連続学習会の内容

 第1回…「精神の病気について学び理解しよう」講師:精神科医
 第2回…「精神障がい者への看護を通して支援を考える」講師:訪問看護師
 第3回…「精神障がい者への訪問介護の実践を通しての学び」講師:介護福祉士
 第4回…「精神障がい者が利用できる福祉サービスと障害者差別解消法」
      講師:三郷市障がい福祉課課長補佐

(民医連新聞 第1624号 2016年7月18日)